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綱渡りの進歩度はイマイチだったのだが、キトでの最終公演が終わったあとテントで下駄を脱いで足袋を履いて綱の上に乗ってみたら、足指で綱を挟め上手くバランスが取れることに気づいた。いつも半分くらいで落下していたため、もはや落下することが目的のようになっていた練習に光が差し始めた。
「凄いね、その調子!」
最後まで渡り切った私にクリーは拍手を送ってくれた。今回ばかりは調子に乗ってもバチは当たるまい。
夜のテントで休憩していたらジュリエッタが鼻歌を歌いながらやってきた。
「道化の恋は一度きり〜♬」
そのフレーズがなぜか頭に焼き付いて離れなかった。
私は一度の恋すらしていない。これからできるとも思えないけれど、もし心から愛する人に出逢えるのなら人生でたった1人、一度きりでいい。
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