冷たいスコール

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 翌日呼び出されて事務所に行ってみたら、ピアジェは憔悴した様子で椅子に腰掛けていた。  男は私の顔をジロリと見て一言告げた。 「お前をショーに出そう」  聞き間違えだと思った。 「えっ……。でも僕のスキットはつまらないんじゃ……」 「今考えたらそこそこウケそうなものもいくつかある。クリーやヤスミーナの話だと、ジャグリングや綱渡りも上達したということだ。まだまだ十分なレベルには達していないし気は進まないが、ルチアに免じて出してやろう。お前をショーに出さないと、娘がいつまでも口をきいてくれないだろうからな」  結局ルチアのためか。心の中で大きなため息が出た。 「頑張ります」 「だが条件がある」  ピアジェはピシャリと言った。 「スキットは必ずルーファスと2人でやれ。ルーファスがオーギュスト、お前がホワイトフェイスを演じるんだ。下らないパントマイムだけは辞めろよ。あんなもの、言葉をおざなりにしている」 「……分かりました」  私だけの能力を買われたわけじゃなかったことに落胆したが、ルーファスと2人でやるなら安心でもある。確かに私たちはいいコンビだし、賢くて才能に溢れた彼と2人なら面白い寸劇が作れそうな気がする。  ついでに言うと、パントマイムはつまらなくなんてない。ルーファスがやるのを何度か観たことがあるけれど、本当に物体がそこに存在するみたいに見えて凄く面白い。感性に乏しいピアジェが面白さを理解していないだけだ。  事務所を出る直前、ピアジェは釘を刺した。 「ミスは絶対に許さない。一つでも綻びがあれば、どうなるか分かってるな?」 「分かってます。精一杯やります。それと、パントマイムは面白いですよ。さっき言葉をおざなりにしていると言いましたが……。僕はこう思うんです。サーカスは聴くものじゃなくて、観るものだと」  ピアジェはくっと短い声を出して押し黙った。
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