第二話

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小波がスマホを取り出して、バンジージャンプを検索しだす。行動の早さに京子が笑った。 「小波、煙草はダメって言うのに、クレジットカード使い込みは良いの?」 クスクス楽しそうにメガネの奥で色っぽく目を細める京子に、小波はキュンときた。美人の笑い顔キュンエロい。 「だって、お金の問題は後でどうとでもなるからいいんだよ!」 「どうとでもなるの?」 「元気なら、お金はどうにか稼いで返せる! 何より大事なのは 『健康』と『時間』!」 小波の発言は切実だ。小波が蘭にこのバンジーどう?とスマホ画面を見せて笑いかける。 蘭がニタニタ笑う。 「お前ノリ最高じゃん」 「今行かないと死んじゃうからね」 「生き急ぎの小波だな!」 蘭がゲラゲラ笑うが、小波は本気だった。 猛烈に生き急がなきゃいけない。 小波はポチッと予約ボタンを押して3人に予約画面を見せる。 「明日はバンジージャンプするぞぉ!やりたいことはすぐにやれ!」 「マジかよ小波!お前イッてんな!」 「アッハハハハ!本当に取っちゃったんだ小波ちゃん勢いすごい!」 「ふふっ、なにこれ信じられない」 3人は顔を見合わせて肩を震わせて笑いだした。さっきまで煙草吸いながら退屈で死にそうな顔してた3人が笑顔になって、小波はホッとした。 容赦ない死の冷たさを跳ね返すように、 バカみたいに笑っていたい。 そう、このたった4人の同期みんなで! それが小波企画の やりたいことリスト一番上だ!! 小波はリストに書き込んだ一文を指さした。 「よし!次は『屋上で愛を叫ぶ!』やろう!」 「ありがちー!」 「青春あるあるもやるのかい?」 「楽しそうね。小波からどうぞ?」 「任せろー!」 小波は勢い勇んで走って行き、屋上の端の柵に足を引っかけて立った。 そして青い青い空に向かって、大声を出す。 「チャーハン大盛ーーー!!!」 「ブッハ!!お前、何の愛叫んでんだよ!!」 貴之と蘭がゲッラゲラ笑って、床を叩いた。京子もメガネが曇るくらい笑った。 小波はくるっと3人を見てピースサインだ。 「次どうぞ!京子ちゃん!」 「私?」 京子は自分を指さして一瞬考えてから、すっと立ち上がった。 「え、京子もやるのかい?」 「私、こういう、一歩踏み出す瞬間を待ってたのかもしれないわ」 ニコリと品の良い京子の笑みに、貴之はキョトンとした。 京子も柵に足をかけて立ち、小波が初めて聞く大きな声をだした。 「チャーシューメーン!!!」 「京子ちゃん最高じゃん!」 でかい蘭が走り込んで来て、柵に足をかけて叫んだ。 「俺は絶対!餃子―!!!!」 貴之も走り込んで3人に並んだ。 「酢豚―!!!」 「いや、酢豚は違うだろ貴之!」 「いいじゃないか!愛だろう??僕の愛に文句つける気か?!」 「お前ら何やってんだ授業中だぞ!!」 屋上に担任が乗り込んできた。 4人で青空の下叫びまくった愛は、高校全体に響き渡っていた。  
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