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第三話
小波はThe・日本家屋な下宿の居間で、先日同期4人で行ったバンジージャンプの写真を見ていた。
「ブッフフフ、蘭の顔やっば!」
全員がバンジージャンプした際の、見事な変顔が並んでいる。小波は一枚一枚アルバムに入れて笑う。
あれ以来、4人でやりたいことリストをどんどん書き込んで、クリアしていっている。
札束お風呂ごっこしてみたり、メントスコーラ祭りしてみたり、校庭にミステリーサークルをつくったり。
くだらないけど、やりたいことを着実に積み上げていた。
「お、バンジーの写真?うっげ小波、お前顔やっば」
居間にやってきた蘭が小波の後ろにぴったり座って肩に顎を乗せてくる。
蘭はマジで距離感バグってる。と小波は思う。
「蘭、いっつも近いってば!」
「は?俺に文句言うなし」
「俺様ヤンキーやめろし!」
わざわざ小波の両側から腕を伸ばしてアルバムを見始める。
何度注意してもこの調子だ。男に耐性のない小波は、蘭にその気がないことがわかっていてもいちいち体温が上がってしまう。
「バンジー笑ったよな。今度、富士山行こうぜ」
「よし、行こう。今度の休み。貴之パパのカードで」
「俺、小波ほどノリ良いやつ見たことねぇわ。ある意味ぶっ飛んでてソンケー」
「やりたいことは、すぐにやれ!だよ!」
小波の頭をガシガシ撫でて、蘭が豪快にカラッと笑う。
外行きの服を着ているところを見るに、またお姉さんところに行くつもりだろう。
蘭はバイクで1時間以上かかる街に行ったら、週の半分は帰らない。
(蘭ってもしかして、ヤリ捨て女に後ろから刺されて死ぬのでは?)
玄関で靴を履く蘭の背中に立って、小波が不吉な予想をする。
「ねぇ蘭。色んなお姉さんとイチャイチャするのは楽しい?」
靴を履いた蘭は小波をふり返って、首を捻った。
「まあ、楽しいっちゃ楽しいしキモチイ」
「私たちとやりたいことリストやってるときは楽しい?」
「めっちゃ楽しい!」
ニカッと幼くも見える屈託ない笑顔がこぼれた。小波はふっと笑ってしまい、その顔好きだなと素直に思った。
吸いたくもない煙草を吸っている時、
なんとなくお姉さんと寝に行く時、
蘭の顔は薄暗く見える。
今みたいにカラッと笑ってる時間が多い方が、悔いのない人生ってやつなのではないだろうか。
小波は背の高い蘭をまっすぐ見上げた。
「夜、つまんなくて寂しいだけならさ!
小波さんが遊んであげるよ?」
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