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文化祭、当日。
学校に着いた私は、ドキドキしまくりながら朝を過ごしていた。
発表まで、まだ数時間もある。
だけどそのことを考えたら胃が痛すぎて何もできない。
今日、みんなの前で発表するんだ……。
「「律月ちゃーん!」」
突然名前を呼ばれ、なにっ?と振り返ると、叶ちゃんと暁音ちゃんだった。
二人は、いつもよりスカートを短めにして、髪型も凝っている。
「律月ちゃん、今ぼっち?」
「なら一緒文化祭まわろ!」
「えっ⁉︎」
文化祭を、一緒にまわる……?
思わず固まってしまった私。
「え、嫌?」
すぐに肯定してくれると思ってたらしい二人は目を丸くさせた。
私は、慌てて弁明する。
「いや、私と一緒にまわって、楽しいかなって……」
つい最近、この二人と仲良くなれたばっかりだ。
それに、まだ私は完全に臆病を克服させた訳じゃない。
オドオドしてると、二人はニコッと笑顔を作る。
「今さら何言ってんのー?」
「律月ちゃんといて、楽しくない訳ないでしょ?」
叶ちゃんは私の右手、暁音ちゃんは私の左手を握る。
そして、両側からニッと笑ってくれた。
…………私、一緒にいて楽しいって思ってもらえることが、仲が良いって事だと思ってた。
だけど、そうじゃないんだ。
一緒にいるだけで、普通に会話をするだけで、それだけで良いんだ。
二人の笑顔を見て、ずっと胸の底で鎮座していた黒いものが、剥がれる感じがした。
「……うんっ!一緒に、まわりたい!」
私は、心から笑顔になる。
そして、三人で色んなクラスの展示を見たり模擬店を巡ったりする。
それがすごく楽しくて、友達と一緒いる、っていうのがすごく幸せで。
発表のことを忘れられて、空っぽだった空白に新たな思い出が追加されていく。
……もう、こんな経験できないと思ってた。
中学生の時に捨てた、明るい青春。
もう思い出したくないって、記憶から消してた過去。
それらに目を向けて、ちゃんと向き合わせてくれたのは……。
私が一番尊敬してる、大好きな人。
舞台上で、感謝を伝えなきゃ。
今の私があるのは、夕陽先輩のおかげだって。
私が、輝けるように導いてくれた———私の、太陽だってことを。
*・゜゚・*:.。..。.:*・’ ☾ '・*:.。. .。.:*・゜゚・*
「緊張してきた!」
そして、時計が十二時半を指している体育館。
暁音ちゃんは、緊張してると言いながらもワクワクした様子だ。
「裏から入るんだっけ。でも、中ほとんど人いないし大丈夫だと思うけどねぇ」
叶ちゃんに続いてちょっと中を覗いてみたら、午前中は演劇部や吹奏楽部で賑わっていた体育館は、今はほとんどお客さんがいない。
ちょうど、お昼の時間帯だからかな。
電気が消されて、誰もいないステージにスポットライトだけが付いている体育館。
体育館の二階のスペースに照明の機械があって、それがステージを照らしているんだ。
体育館の裏から入った私たち三人は、舞台の裏側に回る。
そしたら、既に夕陽先輩たちが揃っていた。
「お。早いね。お弁当食べれた?」
曜大先輩が、何やら機械をいじりながら顔をこっちに向けた。
「食べれました!出店のサンドイッチ美味しかったですっ」
「三人でポテトを分けて食べたんですっ。律月ちゃん、ほとんど食べてなかったですけど」
暁音ちゃんの視線が私に向き、私はウッと喉を詰まらせる。
「き、緊張して……」
あと、三十分ぐらいで発表が始まってしまう。
このステージから、今から発表するなんて……。
また胃が痛くなってくる。
「大丈夫!昨日の練習すごい良かったから!」
香澄先輩が、勇気付けるように私の肩に手を乗せた。
温かい手のひらに、私は少しだけ落ち着く。
「よし、できたっと」
曜大先輩が、機械をいじってた手を止めて息をつく。
「これ、なんですか?」
叶ちゃんが曜大先輩がいじってたものを覗き込み、私と暁音ちゃんもそれに続いた。
「これ、さっき渡された即興の音響の機械。天文部そんなに大きな機械いらないでしょ?ってダンス部のリハ用に機械持ってかれちゃったんだ。だからこれ、インカムマイクで繋げられる小さいやつ」
曜大先輩に手渡されたのは、テレビで見るようなインカムマイク。
わっ、これでやるんだ。
「なに、突然そんなこと言われたの?大丈夫なの?これ」
夕陽先輩が、顔をしかめてインカムを手に取る。
「大丈夫大丈夫。音響の裏の作業は係の子がやってくれるから、俺たちは発表の時にマイク付けて喋れば良いだけ。音響の機械オンにしたままマイク付けて喋ると、些細な音も拾われるから気を付けて」
曜大先輩から細々と説明を受け、私たちは試しにインカムマイクを付けてみた。
「わぁっ、芸能人みたい〜」
「すご!これで喋るの楽しみ!」
暁音ちゃんたちがテンション高くはしゃぎ、場の空気が少しだけ和む。
「マイクオンになってない時、袖幕の音響係の人とは声が届かないから、このスケッチブックでやりとりしよう」
曜大先輩が、袖幕の机に置いたのは、白いスケッチブックとマーカーペン。
反対側の袖幕にも、同じようなスケッチブックとペンが置いてあるのを見つけた。
「なるほど!ジェスチャーでやり取りしようかと思ってたけど、文字に書くのね。曜大、ナイス!」
香澄先輩はポンッと手をたたき、納得して笑う。
「他、何か質問ある?」
曜大先輩が私たちを見回し、そしたら叶ちゃんが手を上げた。
「曜大先輩、なんでそんなに機械に詳しいんですか?」
いたって真面目な顔で、思ってなかった方面の質問をする叶ちゃん。
私だけじゃなく、部員全員が一瞬拍子抜けする。
「そこ気になる?実は俺、機械とかメカとかいじるの大好きなんだよね。音響の設置も、ほぼ俺に任されてさ。設置はバッチリだから安心して」
まだ眉根を寄せてる夕陽先輩に、自信満々の笑顔を向ける曜大先輩。
夕陽先輩は、あまり納得してない感じだけど。
「天文部のみなさんですか?本番発表まで、残り十分です」
袖幕の階段から顔を出して合図をしにきた、文化祭実行委員の人。
私は、途端ヒュッと息を吸い込む。
あ、あと十分……!
気付けば、舞台の緞帳は下がってるし何だか体育館がザワザワし始めた。
「わ〜、お客さん、入ってきたね」
香澄先輩が階段から体育館内へと顔を覗かせてる。
私も一緒に覗くと、既にズラッと並べられたパイプ椅子にお客さんが座ってる。
「ど、ど、どうしよ……。大丈夫かな…………」
唐突に不安が押し寄せてきて、胃の痛みが加速する。
「律月、大丈夫だから」
ポンと頭に手を乗せられて、振り返ったら夕陽先輩だった。
「ゆ、夕陽先輩」
私が震える声で呟くと、先輩は大きな目を真剣に開いている。
「大丈夫。律月は、やればできる。心配なんてしないで今はこの場を楽しむこと。分かった?」
優しく、強く私に言葉を投げかける夕陽先輩。
私は、先輩の言葉を一言一言、大事に噛み締める。
「…………はい。私、頑張ります」
今度はしっかりした声を出せた。
その声に、夕陽先輩も目線で返してくれる。
そして、夕陽先輩はいつもの部長の顔になった。
「じゃあ、そろそろスタンバイしようか。一番目は香澄だよね?本番直前になったら、舞台上で待機して。パソコンとスクリーンは接続してあるから、舞台上にあるパソコンでスライド出せば大丈夫。自分の番が終わったら、今いる方の右側にみんな戻ってきてね」
テキパキと無駄のない説明で指示する夕陽先輩に、私たちは従って動く。
だんだん体育館が賑やかになり、数分後には袖幕の私たちの声も聞こえづらいほどになってしまった。
着々と迫る、発表の時間。
握り込んだ両手に、ぎゅっと力が入る。
「天文部さん、発表一番目の人は舞台上にお願いします」
実行委員の案内で、香澄先輩が「よっしゃ」と立ち上がった。
「いってくるね!」
ニカッと明るい笑みを浮かべ、香澄先輩は舞台上へと上がっていく。
緞帳の降りたステージを照らしていたスポットライトが、ふっと消えた。
ドクンッと、心臓が一際大きく跳ねる。
———始まるっ!
「これより、午後の公演を開始致します。午後の部、十三時より天文部の生徒による発表が始まります———」
アナウンスが響き渡り、体育館内のガヤガヤが収まっていく。
そして、その声は小さくなり……、体育館が、シンと静まり返った。
音を立てて、ゆっくり緞帳が開いていく。
開ききった緞帳のあと、カッと白い照明に照らされた舞台上。
そこに、堂々とした表情で香澄先輩が立っていた。
「天文部の発表へようこそ。今回は、天文部員六人が、天体についての発表をします」
オンになったインカムで、ハッキリとした声で喋る香澄先輩。
大きな音が、体育館中に響き渡る。
「意外と、声通るね」
「でしょ?普通のマイクと同じぐらいじゃないかな」
横で、夕陽先輩と曜大先輩が小さな声で話している。
舞台上の香澄先輩は、そこまで声を出しているようには見えないのに、声は響いてる。
これなら、私の小さな声でも案外ちゃんと拾ってくれるかもしれない。
「それでは、天文部の発表をどうぞお楽しみください!」
香澄先輩が言い切ると、体育館からパチパチと大きな拍手が聞こえた。
「賑わってるね。発表のしがいがあるな」
「まぁ、こっちは必死に準備してきたからね。もっと盛り上がってもらわないと」
テンションが上がってる曜大先輩に、相変わらずクールな夕陽先輩。
私はそんな対照的な先輩たちを見たあと、さっきから一言も喋らない同級生たちを見やった。
「……ききき緊張する…………っ」
「やば、お腹痛くなってきたぁ……」
叶ちゃんと暁音ちゃんは、割と重症な様子でさっきから震えている。
「え、大丈夫?後輩ちゃんたち」
「まだ舞台上に立ってもないけど」
先輩二人に覗き込まれ、二人はガタガタしながら「「大丈夫でぇす……」」と半笑い。
その様子に、なんだか逆に私は冷静になってきちゃったよ。
この調子で、自分の番まで心を落ち着かせて頑張ろう。
「これで、発表を終わります」
体育館から、拍手の音が聞こえた。
「あ。香澄、発表終わったよ」
夕陽先輩が舞台上に目を向けると、こっちへ戻ってくる香澄先輩の姿。
入れ替わりで、今度は曜大先輩は舞台へと上がる。
「お疲れ、香澄」
「夕陽〜〜!緊張した!」
夕陽先輩が声をかけた途端、堂々と戻ってきた香澄先輩は夕陽先輩の方へ倒れ込む。
「香澄先輩、すっごい良かったですっ!」
「最高でした!」
さっきまで南極にいるみたいに震えてた二人は、シャキッとして口々に香澄先輩に感想を伝える。
「ありがとう〜〜っ、みんなの発表も、楽しみにしてるね!」
香澄先輩はやりきった顔で笑い、水を一口飲んだ。
そして———。
曜大先輩の発表も終わり、叶ちゃんが舞台上に立つ。
出ていくまでは不安そうな表情をしていた彼女も、舞台上ではしっかりと発表をしていた。
そして今、舞台上には暁音ちゃんが立っている。
スライドを流しながら話す暁音ちゃんの声が、大きく響く。
……そろそろ、私の番だ。
ごくっとツバを飲み込み、姿勢を正す。
深く深呼吸をして……、大丈夫。大丈夫。
何度も自分自身に唱える。
もう一回、深呼吸…………、
「これで、私の発表を———」
中途半端なところで途切れた暁音ちゃんの声に、吸い込んだ息が止まった。
突然、舞台上の暁音ちゃんの声が聞こえなくなったんだ。
……なんかあった?
顔を見合わせる私たちの横を、夕陽先輩がすぐさま動いて走る。
嫌な予感に、私も袖のギリギリまで歩いていった。
そしたら、舞台上でしきりにインカムマイクをトントンとしている暁音ちゃん。
不安げな表情を浮かべているけど、何回かマイク叩いたあと、諦めたのか客席にペコッとお辞儀をして逃げるようにこっちに戻ってきた。
「どうしたの」
すぐに詰め寄った夕陽先輩に、暁音ちゃんは顔を強張らせていた。
「急に、インカムが使えなくなってっ」
「インカムが?」
夕陽先輩は顔をしかめて、暁音ちゃんから受け取ったインカムを自分で付ける。
そして、
「あ、あ、あ……」
割と大きな声で、『あ』の音を喋る。
……だけど、声が聞こえるのは夕陽先輩の口からで、舞台上に設置してあるスピーカーからは声が聞こえない。
「……ほんとだ。急に壊れてる」
夕陽先輩は、眉をひそめて今度は自分のインカムを付ける。
「……マイクテスト、マイクテスト」
また言葉を発するけど、舞台上からは声が聞こえない。
……夕陽先輩のも、壊れてる?
突然の事態に、鳥肌が立つ。
私は震える声を抑えながら、自分のマイクに口を近付けて「…………あ」と声を出してみた。
……だけど、スピーカーから声は聞こえない。
曜大先輩も香澄先輩も叶ちゃんも試すけど、誰の音も拾わない。
これ…………みんなのインカムが壊れた……⁉︎
「どうしました?何かありましたか?」
誰も舞台上に上がらないからか、階段から実行委員の人が顔を覗かせた。
バッと一斉に顔を向ける私たちに、実行委員の人は何かあったんだと察する顔になる。
「至急、普通のスタンドマイクを持ってきて。インカムが壊れて使えなくなった」
短く言い切った夕陽先輩は、今度は素早く袖幕へと上がってスケッチブックを手に取る。
何かを急いで殴り書きして……、袖幕ギリギリにしゃがんで、反対側の音響の人にスケッチブックを見せている。
こっちのスケッチブックに気がついた音響の人は、あっちもすぐさま何か書き込む。
腕を限界まで広げて向こうが見せてきたスケッチブックには…………、
『接続が悪くて、こっちからインカムとスピーカーへ音が届かない』
と、書いてあった。
「接続っ⁉︎」
悲鳴みたいな声を上げた曜大先輩は、顔が蒼白になっている。
「ま、まさか、俺のせい?」
たしかに、音響を接続してたのは曜大先輩だ。
だけど曜大先輩、自信あるって言ってたし、そもそも今の今まで使えてたのに!
「いや、曜大のせいじゃない。暁音の時までちゃんと使えてたし、それまで不具合はなかった。だとすると、向こうの音響の人が何かミスしたんだよ。……ったく、ダンス部が勝手に機材持ってって、突然こんなもの使い始めるから」
低い声でうなるように呟いた夕陽先輩。
袖幕の私たちは、揃って顔を見合わせる。
客席が、ザワザワと異変に気付いて喋り出している。
「マイクはまだ?」
夕陽先輩が階段を駆け降りて、ドアから顔を覗かせる。
と、ちょうど実行委員の人が走って戻ってきた。
だけどその手には、マイクを持っていない。
「あ、あのっ、マイク、どこも出払ってて、貸し出し用のやつが一つもなくてっ!」
必死な形相で喋る実行委員の子に、私たちはギョッと顔を見合わせる。
マ、マイクもなしっ⁉︎発表どうするの⁉︎
私は唖然として実行委員の子を見る。
「そ、それと、この後の舞台発表のスケジュールの都合で、とにかく舞台上で発表を再開させてほしいって……」
小さく喋る声に、私は「えっ」と声を出す。
そして、気付けば身を乗り出していた。
「そ、それ、マイク無しで発表して……ってことですか?」
「はい……」
申し訳なさそうに呟く声に、私は血の気が引いた。
う、うそ。今からする私の発表、マイク無しでやるの?
呆然とする私の横で、夕陽先輩がギリッと歯ぎしりをした。
「……おかしいでしょ。そもそも、急遽インカムマイクでやることになったのはダンス部の都合で、それを許可したのは実行委員でしょ?そっちの責任なのに、今度はあんたたちの都合で発表を再開させろ?ふざけんじゃないよ」
初めて、夕陽先輩が怒っているのを見た。
声が苛立っていて、実行委員の子はヒッと体をすくませる。
「ゆ、夕陽。落ち着いて」
香澄先輩が、慌てて夕陽先輩の前に立つ。
ハッと我に返った様子の夕陽先輩は、バッと首を私に向けた。
えっ…………?
だけど夕陽先輩はブルッと頭を振って、いつもの冷静な部長の顔に戻る。
「……次、私が出る」
低く呟いた夕陽先輩は、階段を上がっていく。
「———えっ」
突然のことに、身動き取れない他の部員。
だけど私は素早く反応して、慌てて夕陽先輩を追いかける。
「ま、まってくださいっ。次、私の番です!」
必死に声を投げると、夕陽先輩は歩きながら私を振り返った。
「それは分かってる。だけど、この状況で律月が発表するには厳しいでしょ。だから私がまず出て、時間稼ぎする」
夕陽先輩は、有無を言わせない表情で喋る。
「じ、時間稼ぎって……」
夕陽先輩だって、これまで必死に発表の準備をしてきた。
今まで、どんなに一生懸命になって練習してきたか、私も知ってる。
それなのに、それを時間稼ぎの発表にしちゃうの⁉︎
駆け寄ろうとするけど、そしたら次は私が発表をするんだ。
マイクがなくて、アクシデントで不穏な空気の体育館のステージで。
そう思うと、肝が冷えた。
どんどん私から離れていく夕陽先輩。
夕陽先輩なら、きっと良い発表ができる。
ザワザワしてる体育館の空気なんて吹き飛ぶぐらい、素晴らしい発表をしてくれる。
このまま、夕陽先輩に任せた方が、賢明なのは明らかだ。
……だ、だけど!
「———わ、私が行きますっ!」
自分でも驚くぐらい、大きな声が出た。
その大きさに驚いたのか、夕陽先輩が振り返った。
……夕陽先輩の発表を初めて見た時、心の底から感動した。すごいって思った。
そんな私が心打たれた発表を、舞台上でしてほしい。
こんな、時間稼ぎの方法で、夕陽先輩に適当な発表をさせるのはダメだ……!
私の心が、そう叫んでいる。
だけどそれは言葉にできずに、目だけで必死に伝える。
夕陽先輩は、しばらく私の覚悟の顔を黙って見つめていた。
「……分かった」
夕陽先輩は、肩を下ろす。
そして、階段を降りて私とすれ違う。
「……マイクなんてなくたって、律月ならできる」
夕陽先輩の、小さな強い声が耳に響いた。
私は、今までで一番強く頷く。
……自分を、信じるんだ。今の私なら、きっと。
そして、覚悟を決めて階段を上がっていった———。
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