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なんで、天文部が発表なんか……。 重たい足取りで、ため息もずっと重い。 どうしてこうなってしまったんだろう。 座学だけの毎日はつまらないとは思ってたけど、研究発表って。 考えただけでも、足がすくむ。 どうにかして、断らないと。 だけど、先輩に言いに行く勇気もない。 どうしよう…………。 家に帰り、すぐさま窓を開けた。 こんな時は、月を見上げて心をリフレッシュしよう……と思ったんだけど、あいにくの曇り空。 月は雲に隠れて、ぼやっとしている。 ……こんな時まで、私の心とシンクロしなくていいのに。 また、ため息が出た。 空から視線を外し、部屋の中に向ける。 目に入ったのは、机の教科書立ての隅にある、クリアファイルに入れられたチラシ。 中学校の時、色んな学校の天文部を調べた時のものだ。 私は、好き!と誇れるものが天文しかない。 月が好きで、大好きな月にいつも支えられてきたから。 自信が持てないこの性格も、天文部に入れば変われるかな……って思ってたけど。 いざ天体観測をするよって言われたり、研究発表をしよう、と言われても、実際は根本的に何も変われてなくて、嫌がって怖気付いてるだけ。 ……こんな自分じゃ、ダメなのに。 分かってるのに、変われない。 自分を変えようとする努力もしていない。 ますます自分が嫌いになっていきそうで、頭を振った。 そして、雲で隠れてる月を見上げた。 「……私も、雲で隠されても輝けるぐらい、自分に自信が欲しい」 顔を出さない月に向かって、そうつぶやいた。
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