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「夕陽!お願いだから〜!」
準備室に用があって、部活終わりに作業していた後のこと。
理科室から、女子の先輩の声が聞こえた。
……なに話してるんだろう。
私はなんとなく気になってしまって、ちょっと隙間から覗いてみた。
そしたら、教室の中には夕陽先輩と、もう一人の女子の先輩。
何やら、夕陽先輩に頼み事をしている様子だ。
「なんで私が……」
渋った声を出している夕陽先輩。
「だって、夕陽得意でしょ!それにこういうの部長がやった方が良いし!」
女子の先輩は、両手を合わせて夕陽先輩に向き合ってる。
「その、なんでも部長に押し付けますスタイルやめてほしいんだけど」
「私、センスないから!あんなのさらせない!だからお願い!」
「えぇ……」
何をお願いされてるのか分からないけど、夕陽先輩はすごく嫌そうな声で返事をする。
……何のお願いなんだろう。
私は気になりながらも、理科室を後にした。
先輩たちの会話の答え合わせは、意外とすぐだった。
三日後ぐらいの日の部活で、夕陽先輩が渡したクリアファイルの中身を見た先輩たちが、感動の声をあげていた。
「うわぁっ……。やっぱ、夕陽に頼んで正解だったわ」
「ナイス!ありがとね」
先輩二人にグッドサインを向けられて、夕陽先輩は「どーも」と適当にあしらってる。
「なんですか、それ?」
「見たいです〜!」
一年二人も興味津々で、女子の先輩が受け取ったクリアファイルを見ている。
「見るっ?じゃじゃーん!すごいよね!」
先輩が中から取り出したものは……。
「…………綺麗…………」
遠くで見ていた私は、思わず感嘆の声をもらした。
クリアファイルの中に入っていたのは、写真だ。
空が映し出された、写真。
夜の星々や、流れ星、昼間に見える月……など、たくさんの数十枚ほどある。
写真家が撮った、写真?
「すっごい……綺麗!」
「これ、もしかして夕陽先輩が撮ったんですか?」
「そうだよ」
私は、さらに驚愕して写真を見た。
……これを、夕陽先輩が?
「よく天体観測で写真も撮るし。文化祭実行委員から、天文部の展示発表もしたいって言われたらしくて、写真の用意は全部任されたからさ」
夕陽先輩は「ね?」と片眉をあげて女子の先輩を見やる。
一方、女子の先輩は、「えへへ!ありがとう〜」と笑ってごまかした。
「あとは、俺が簡易プラネタリウム作れば、展示はオッケー?」
男子の先輩に聞かれ、夕陽先輩が頷く。
「うん。そっちの方は任せたよ。ったく、急に色んな仕事増えるんだから」
肩をすくめる夕陽先輩。
それでも完璧にこなせちゃう夕陽先輩、すごすぎる。
天文の知識もあって、リーダーシップもあって、仕事もできる。
申し分ないぐらい完璧だ。
……夕陽先輩って、こんなにすごい先輩だったんだ。
今さらながら夕陽先輩のすごさを実感して、私は先輩のことを大きく感じた。
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