2.女心

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2.女心

1ヶ月前のヒッタイト帝国――― 「カーラー!!おーいっ!」 「?!」 私の名前を気安く呼ぶ人物などそう多くはない。しかもこの大声。背後からでも声の主は容易に判別できる。 「皇太子殿下!」 私は驚きを持って振返り、翻って騎馬を降りた。今しがた帰郷したばかりなのに、庭園でばったり会うとはタイミングが良すぎる。しかも私は数日間湯あみをしていないし、服も替えていない。 しかし殿下は全く意に介さない様子で、私にまぶしい笑顔を向けた。 「聞いたよ!おめでとう!女なのに軍を率いて戦うなんてさ。心配したけど、本当に勝っちゃうんだから!」 「殿下の方こそ、陛下の下で一翼を担ってご活躍されたとか。私も皇帝陛下のお役に立つために、当然の事をしているだけです」 「だからって…女なのに、何も戦いに出なくても…」 「女であっても、男と同様に出来ます!政治も、戦争も、全て」 そう。私は全てを完璧にしなければならない。殿下には言えないが高等な魔術も習得している。女である自分が皇子たちと肩を並べ、皇帝陛下のお役に立つためだ。 「そうかもしれないけど、ちょっと頑張りすぎなんじゃない?」 「殿下こそ、もっと真剣になった方が良いのではないですか?私たちはいとこであり、同い年。もう15歳になったのです」 「わかってるよ!僕は君の心配をしているだけだ」 「それは、どうもありがとうございます」 可愛くない、そう思われただろう。しかし、女という理由で差別されるのは我慢ならない。皇子たち、兄弟たち…誰と比べても私は劣ってなどいない。 背後で殿下のため息が聞こえたが、私は無視してその場を辞した。
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