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「灰木くんって、不思議。しゃべってみたら、話しやすいのに。どうして自分からみんなを遠ざけるの?」
「それは百瀬さんも一緒でしょ」
手のひらに乗せられた鉛筆は、青い。先月までは、緑だったはずだ。どんどん色が失われていく。
「わたしは、灰木くんとは違うよ」
いつか、今見ている景色ですら羨むようになるのだろう。あの頃は、まだよかったって。
モノクロの絵がむき出しになっていても、それほど気にならなかった。わたしにとって、このノートはどうでもいいものになったのだ。
「違ってあたり前だよ。俺ら別の人間なんだから。考え方も見てるものも」
するりと手からすり抜けて、ノートは灰木くんの元で止まった。
「でも、俺は好きだな。百瀬さんの絵」
長い前髪のせいで表情は分かりづらいけど、少しだけ唇が笑っている。
「……ありがとう。初めて、言われた」
この日から、雨が降らないかぎり毎日河原へ通った。昼過ぎに行くと、決まって灰木くんがいて、夕方まで一緒に絵を描く。
お互いに、一時間以上無言の時もあれば、少し言葉を交わすこともある。
春休みも残り三日。物置の整理を頼まれていたわたしは、早く済ませて出かけようとしていた。埃っぽいダンボールを開けて、懐かしい私物を物色する。小学生のときにしていた交換日記や、友達からもらったマンガノート。どれも手放したくなくて、仕舞い込んでいる。
「捨てる物なんて、なにもないよ」
もうひとつのダンボールを引っ張りだして、手が止まった。出てきたのは、小学生のときの作品。
「……これって」
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