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花森くんのあれやこれ③
次の日の朝、いきなりヤリチンのくそ野郎と言われ頭を殴られたようなショックを受けた。が、確かにそう言われても仕方のないような誘い方をしてしまったのは事実だ。
しかも花森の告白はまったく伝わっておらず、仕舞いには泣かせてしまい心から焦った。
でもその涙の意味が嫉妬だと分かったときは、思わずその場でガッツポーズしそうなくらい嬉しかった。しなかったが。
そして、花森が再度きちんと交際を申し込むと、茎田は花森と付き合うことを了承し、めでたく2人は付き合うことになった。
前から可愛いかったのだが、付き合ってからは本当に毎日茎田が可愛くて可愛くて可愛くて、花森は心の底から幸せだった。
学校中に、いや、全世界に茎田は自分のものだと自慢したいくらい浮かれている。誰に何を言われて構わない。いっそバレろ。
「つーかなんでおまえのことを考えてたってだけでスケベ扱いなんだよ。俺がスケベなことを考えてたっていう証拠でもあんのか?」
「だ、だって顔が!」
「顔がなに? つーかさ、スケベなこと考えてたのはむしろおまえの方だろ? だから俺のことがスケベに見えんだよ、茎田のスケベ」
「ちょっ……黙れ花森!! スケベスケベうるせぇえんだよ!!」
「言い出したのはそっちだろ? 何、茎田はそ~んなに俺とスケベなことがしたいわけ?」
からかうようにそう言ったら、茎田は顔を真っ赤にして目をそらした。そのあまりの可愛さに、花森は一瞬語彙を失った。
(……は? はああああ!? こいつ本当にマジで可愛すぎだろ──!? くっそぉぉ!! 抱く!! めちゃくちゃに抱いてまたアンアン死ぬほどヨガらせまくってやんよぉぉお!!)
芯まで冷めきっていた──と思っていた自分が、恋をしてこんな風になってしまうなんて思ってもみなかった。
一生誰も好きになれないと諦めていた花森に恋を教えてくれた茎田は、誰がなんと言おうと花森の女神だ。誰から見ても、どこから見てもなんの特徴もない平凡な男なのだが。
「その……うん。また、されたい、っつうか……」
「~~っっ!!」
顔を真っ赤にした茎田の恥ずかしそうな表情と、まるで花も恥じらう乙女のような仕草を見てたちまち元気になってしまった息子をなんとか押さえつけて、花森はせいいっぱい格好つけて言った。
「……放課後、俺んちな」
花森くんのあれやこれ【終】
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