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ジョーは銃を2丁抜き、同時に撃鉄を下ろした。
ニヤニヤと口を緩めて、両腕を真っ直ぐ敵に向ける。
「23人か……余裕だな」
銃声が吠える。
2発の弾丸は馬の上に乗った男たちの胸を貫く。
敵も負けじと応戦し、矢を放ってくるが距離が遠すぎてまだ当たることはない。
「矢を飛ばしてきた!」
「あんなもん脅しだよ。ビビるな」
会話しながらジョーは淡々と敵の体を撃ち抜いていく。
何人もの男が馬上から落下して地面に倒れた。
「この距離から当てるなんてすごいな……」
「殺さないと近づいてくる。近づいてきたら不利だ。だからさっさと終わらせるのさ」
弾切れしたジョーは岩陰に身を潜め、手際よく排莢と同時に1発ずつリロードした。
その間もコルビ族は近づいてくる。
馬の足音が大きくなるにつれ、クリスの心臓がバクバクと鼓動を刻みだした。
「お、おい!やばい!こっち来てる!」
「焦るなよ。焦ると死ぬ確率が高まる。死にたいの?」
「死にたいわけない!」
「じゃあ落ち着くんだ」
ジョーはにやついたまま再度岩陰から顔と銃を出した。
もう自分たちとの距離は10メートルほどしか離れてない。
矢の狙いも正確になってきた。
矢を避け、矢を撃ち落とし、そしてジョーは人間を狙った。
狙いすまされた早撃ちは9人の男の頭を貫く。
残り3人、敵は怯むことなく近づいてくる。
弾は全て撃ち尽くした。
わずかの動揺も見せないジョーは排莢し、弾を込めなおそうとするがもう間に合わなかった。
ジョーは2丁の銃を地面に捨てて、両脛に隠していた小型拳銃を抜き敵2人を葬る。
「ああクソ」
最後の1人が放った矢を、首を捻ってなんとか交わしたジョーは跳びあがり馬に乗った敵に襲い掛かった。
馬上で掴みあう2人だったが、流石のジョーも男の力には勝てずに地面に落とされてしまう。
痛みに悶えているジョーが敵を見上げると、男は弓をひいて矢の先をジョーの頭に向けていた。
「おっと……やばいねこりゃ」
ジョーは死を確信した。
死は受け入れる覚悟はある。
ジョーは目を瞑り、なるべく心穏やかに死ねるよう努めた。
「ジョー!」
「クリス……」
クリスは煙が立ち上ぼるライフルをジョーに向けている。
ジョーは頭が破裂して倒れている男を見て、口笛を吹く。
「やるね」
「はぁはぁ……大丈夫か!?」
「大丈夫だよ。銃口をあたしから逸らしてくれるともっと安心だけど」
「ああごめん……」
ジョーは立ち上がって、奇妙な刺青が彫ってある男を見下ろす。
「まったく……やってくれたよ」
「しかし……君はすごいな。これだけの人数を1人で」
「腕がよくないと商売あがったりだからね。でも危なかった、助けてくれてありがとうクリス」
「『ありがとう』だって?何を言ってるんだ、お礼を言うのは俺のほうだよ。君がいなかったらやつらに生皮を剥がされて食われてた」
「ふふ、そうか」
馬が痛々しい声を出しているのに気づいたジョーは、余裕ぶった表情を崩す。
彼女の愛馬の腹に矢が刺さっているのだ。
ジョーは馬に近づき、拳銃に弾を込める。
「今までありがとう……じゃあね」
なんの躊躇いもなくジョーは馬の頭を撃った。
鳴き声は止み、馬は天に昇っていく。
「……残念だったな」
「まぁ……こういうこともある」
「本当にすまなかった。巻き込んでしまったよ」
「気にしないで。あたしが首を突っ込んだことさ」
「……なあジョー、もしよかったら俺の家にこないか?」
「え?」
「お礼がしたい。このままお別れなんてできないよ。近くに宿もないしさ」
「そうだね」
「どうかな?」
「もちろんお言葉に甘えるよ」
「よし、じゃあ馬に乗ってくれ」
クリスが最初に馬に乗り、地面に立っているジョーに手を伸ばした。
彼女は力強く彼の手を握って、引き上げてもらう。
「じゃあ出発だ」
クリスは馬を走らせる。
ジョーの両腕が自分の腰に巻かれたまま……
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