アン

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アン

 魔導書を見つけたのは偶然だった。パパにとってはガラクタ店のキャビネット・オブ・キュリオシティーズも、私にはワクワクが詰まったお店だ。だからパパが相続した中で、おじいちゃんのお店だけは遺言通り私の名義になった。ただ、お店をやっていいのは18才からとパパに言われたので、私は商品リストを作る事を口実に店内探索をしていた。  ドラゴンの牙、ユニコーンの角、魔法の鏡、マンドラゴラの種。店の天井近くまで雑多に積まれた品の中には、本物がどうかわからない物もたくさんあったけど、そこにまた浪漫や物語を感じて私は好きだった。  倉庫にはラベルが付いてなくて何だかわからない物がたくさんあった。だからまず中身を見ればわかるだろう書物から見ていく事にした。その中に、ひときわ重厚に丁重された本があった。何かの力に守られているように不思議と風化もしていない。それがこの魔導書だった。 「おい娘!」  魔法陣の光が消えると、インプは話しかけてきた。 「わ、わたし?」 「そうだ、そこのそばかす。お前が俺様を召喚したのか?」 「そ、そうよ。私が主よ」 「ふん。何が主だ。簡単な契約だ。たいした拘束力なんかないぞ」  インプはふらりと魔法陣から出てくると、私のベッドに腰かけ足と腕を組んだ。 「でも話は聞いてくれるんでしょ?」  少し怖気づいた私を、赤い目が値踏みするように見つめた。 「お前、幾つだ」 「13」 「やるじゃないか」  褒められて少し安心したのも束の間、インプはベッドを飛び降りると私に詰め寄った。 「だが、これはなんだ!」 「え? 尻尾」  尻尾を持って騒ぐから、そう答えた。 「そんな事はわかってるよ! この姿はなんだと聞いてる」  インプはくるりと回転すると、私に全身をアピールした。
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