わかよたれそ つねならむ

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 こう見えても、僕の学生時代は薔薇色だった。  今となっては同年にアゴで使われている僕にだって、そこそこいい思い出もある。  管理数値が優秀だった僕は、小学校入学と同時に主席を務め、自慢じゃないが故郷では秀才として認められていた。だからこそ都会にやって来れた訳だし、難なく今の職に就職できた。 それに、毎日仕事漬けでクタクタなりながらも勤めているシステム管理業だって、そうそう就ける職じゃない。  そもそも管理数値というのは、ここ20年ぐらいで日本に普及したシステムで、最初は個人番号の配布から始まり、今となっては入学や就職にも関わるほど大きな目安となっている数値の事である。  その便利性ゆえ、世間に浸透するのは早かった。  個人の考えを数値にして可視化し、その人の技量をAIが評価する。昔ではあり得なかった多方面から見た評価は、近代文明に明かりを灯す──。  だからこそ両親も、鼻が高いと僕を都会に送り出してくれた。 「あーぁ……学生時代に戻らないかなぁ」  日々のストレスと共に溜め息となって出たその言葉は、今の感情全てをひっくるんで口から零れ落ちた。
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