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01_北見氏からのファーストコンタクト
札幌の6月。
あちこちでポプラの綿毛が飛び交い、乾いた風は爽やかで、ニセアカシアの白い花が桜吹雪より清楚で可憐に舞い落ちる、1年で最も清々しい季節である。
それなのに──。
「……疲れた」
長万部羽奈は教室へ入ってバケツ型リュックをおろすなり机へ突っ伏した。
弟・樹の件に加えて、相変わらずの両親とのやりとり。朝からもうね、疲労困憊である。
ああああ……『樹のこと』を知ってまだ三日目なのにな。こんなことであたし、やっていけるのかな。
はあああ、と深くため息をついた、そのときであった。
「長万部」
不意に声をかけられた。男子の声である。
あわてて身体を起こしてギョッとする。
正面に北見結翔氏が立っていた。
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