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北見氏──。
その容姿からクラスの、いや学年のアイドルとして崇め奉られた人物である。神々しすぎて、言葉を交わしたことがなくても女子の誰もが苗字ではなく「結翔くん」とささやき合うほどであった。
とっさに左右を見た。
両親の出勤に合わせての、登校には早目の時間だ。クラスにはほかに数人がいるだけだった。
「ちょっといいか」
結翔は挙動不審の羽奈に構わずそういうと教室を出ていった。
「……ついてこいってこと?」
世間ではこういうとき、なんだかいい感じの展開になるらしいが、結翔の気だるそうな背中を見ていると、絶対に告白などというシーンではないといえた。
すると心当たりはひとつである。
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