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身を縮めて羽奈は結翔の後につく。
同じ階の階段の裏手、日陰になったところまで進むと結翔は立ち止まる。そのまま視線だけであたりを見回して人がいないことを確認している。
それからおもむろに羽奈へ小ぶりな箱を差し出した。
「やる」
へ? と受け取り、包装紙を見て手が震えた。
「これは川島庵の包み。ひょっとして」
「豆大福。好きだろう?」
「なんで知ってるの? しかもここの営業時間は9時からだよ。どうやって? あ、昨日のやつ?」
「……さすが詳しいな。安心しろ。今朝のだ。店主に無理をいって作ってもらった」
そこまでして? っていうか、結翔くんってこんな乱暴な口調なんだ。しみじみと結翔を見あげていると、結翔は咳払いをする。
「それは──端的にいって『賄賂』だ」
「……なんのでしょう」
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