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02_話は少々さかのぼる
さかのぼること3日前のことである。
***
きれいな顔だなあ。
羽奈はうっとりと結翔の横顔を眺めていた。
窓際の席の結翔氏。
その結翔氏の長めの前髪を、窓から吹き込む6月の風がさわさわと揺らしていた。そのたびに結翔のすっと伸びた鼻とか耳たぶが見え隠れして、そりゃあもう目が離せない。
ほうっととなりの席の希穂がため息をつく。
「いい男は帰り支度をしていても絵になりますな」
「まったくですなあ。目の保養ですなあ」
前の席の杏奈も希穂に続いてため息をついた。
「モデルやってるって噂、本当かなあ」
「わかんないけど、ありうるよね。部活やってないし、授業おわるとすぐにいなくなるもん」
2人と一緒に、うんうん、とうなずいて羽奈は、は、と我に返る。
しまった。こんなことしている場合じゃなかった。
あわてて視線を前へ戻すと、まさに彼女は教室を出ていくところであった。
まずい。
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