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「ごめーん。あたし、いくね」
「ん? 豆大福でも買いにいくの? あんたって本当に豆大福が好きだよね。地下鉄駅そばの『もちの十人力』? つきあうよ?」
「えっと、違うんだ」
「なら三久大福堂かな? 私もあそこの豆大福好きー。じゃあ札幌駅まで出るの?」
そうじゃないけど、ま、いっか。
うんそう、と適当に相づちをうってバケツ型リュックの柄をつかみ、「いっといでー」という2人の声に「ありがとー」と返して勢いよく教室を駆け出した。
どっちいった?
せわしく首を動かす。
いた。東階段だ。たぶん真っ直ぐ靴箱かな?
よし、と踵を返して西階段へ向かう。一段飛ばしで駆けおりて靴箱へ先回りだ。
やがて1階の靴箱前にあらわれた彼女に正面から近づき、すれ違いざまに手をつかんだ。
「ちょっといいかな」
「へ? お、長万部さん?」
な、なんで、とオロオロする彼女に構わず羽奈は強引に彼女を柱の影へと連れ込んだ。その間、数秒。よし大丈夫。誰にも怪しまれなかったはず。
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