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雨……彼女との出会い
季節は6月……気象庁から『梅雨入り』が宣言された間もない頃……
「空が暗くなってきたな……降るかな?」
大学2年生の 大城 悠 は不安そうに空を見上げた。
街灯横に設置してたる時計の針は夕方にはまだ早い15:00を指していた。
小走りに彼は彼女と待ち合わせに場所に急ぐ。
空が急に暗くなる……ポツポツと彼の額に雨粒が落ちて来た。
彼は立ち止まり空を見上げる。
見上げた空から一本の線のように繋がった雨粒が勢いよく落ちて来た。
地面を激しく叩きつける雨粒は、地面を這うと道路沿いにある側溝に流れ込む……。
「うわ~最悪」悠は荷物を頭に乗せると勢いよく走り出した。
雨粒で視界が濁りながら走り続ける悠。
視線の先に閉店した店の軒下を見つけた。
悠はその場所を目指して全速力で走る。
「ふ~。取り合えず……これで」と全身ずぶ濡れ状態の悠はポケットからスマホを取り出すと彼の彼女、三浦 雪に連絡をした。
「もしもし、雪? 俺……雨にあってて、やみそうにないんだ。
ごめん、少し遅れるから……うん、うん、わかった、じゃあ」と言うと彼は電話を切った。
降りやまない雨……
ふと横を見ると、前髪から雨粒がしたたり落ち、
暗い空を見上げる一人の女性がいた。
白く透き通るような首元に流れる雨の雫……
薄色のシャツは沢山の雨粒で彼女の白い肌までが
見えるほどに透けていた。
彼女の姿を見た悠は思わず目を逸らした。
「雨……やみませんね……」と彼女が声をかけてきた。
「そうですね……この降り方だと……暫くは止まないかな?」
と悠は彼女から視線を外したままで答えた。
彼女の透けた衣類が気になった悠は思わず……
カバンの中からタオルを取り出すと「これ……よかったら使ってください」と彼女に渡した。
「そんな……いいんですか?」と遠慮する彼女。
「いいんです、使って下さい。俺はタオル使ってもどうしようもないくらいずぶ濡れですから……あっ! このタオル綺麗ですから大丈夫ですよ」と悠が笑いながら言った。
「ふふふ……じゃあ、お借りしますね」と彼女も笑うと悠からタオルを受け取り、彼女の頭と胸元を拭いた。
一通り拭き終わると彼女は口元にタオルを当てた。
悠は彼女の横顔を見ると言った。
「タオル……貸して」と悠が彼女の前に手を差し出した。
「あ……いいんですか? 濡れちゃってるけど」
「いいですよ…… タオル貸して」と再度悠が言った。
彼女の瞳が悠を見つめながらタオルを渡す。
悠がゆっくりと彼女の瞳を見た。
綺麗な瞳をした女性(ひと)だ。
と悠は彼女の瞳から目を逸らすことが出来ない。
『一目惚れ』ってこんな感じなのかな? と思った悠……彼女からタオルを受け取ると「少し、小降りになったかな? じゃあ、俺はこれで……」と言うと雨の中に走り出して行った。
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