プロローグ

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プロローグ

 どんなことも、キッカケは些細(ささい)なことであることを、私は身を持って知っている。 「お姉ちゃん。ケーキ屋さんでバイトすれば、友達にバレないし、食べ放題じゃん」  妹にそう言われて、名案だと思ったし、実際そうなりたいと思った。  周囲の目を気にせず、思う存分スイーツを味わう。  ささやかだけど、手に入れたい場所(ゆめ)だった。   けれど 「これ、店に出す予定の新作。感想くれ」  気難しそうな表情をした若い男性が差し出したプレートの上には、カットされたフルーツタルトがのっている。  イチゴにブルベリー、オレンジ、キウイ……舌だけではない、目でも楽しませる彩り豊かなフルーツたちが宝石のようにキラキラと輝いている。  早く食べたいと、ノドがごくりと鳴った。 「朝陽(あさひ)。見過ぎだ、早く食べろ」 「あっすみません」  あわててフルーツタルトにフォークを入れる。  サクッと音が立てた。それだけで自分のテンションが上がったのがわかる。
  食べやすいサイズになったフルーツタルトをフォークで自分の口へ運ぶ。  フルーツタルトが口に入る瞬間。 「ふふっ。朝陽くんは本当に根っからの”スイーツ男子”だね」 「ただのスイーツ馬鹿だろ」  いつの間にか近くにいたオーナーと男性の会話にギクリと心臓が跳ねた。  まさか……こんなことになるなんてっっ!!
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