桜の回が嫌いな理由

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桜の回が嫌いな理由

 「すーこん」で桜に関するテーマが設けられたの過去2回。1回は文字通り「桜」というテーマで、もう1回のテーマは「桜の木の下」だった。1回目についてはまだノベルキングダムに登録前だったので結果しか分からないが、第3位までが賞金枠な中で1000本以上の作品が応募されたという。ただでさえとんでもない倍率なのに、全体の講評では ・いつも以上に選考が難航した ・非常にレベルが高く、落選したものの中にも他の回なら賞金枠に入れたものも沢山あった  などと、激戦であったことを予想させる文言が並んでいた。  2回目の「桜の木の下」の回は私も参加した。でも、私の貧弱な想像力では桜の木の下と聞いて思いついたのは、 ・隣人との土地の境界を巡る揉め事。相手の家主が境界にこだわるのはその臨界点にある桜の木下に死体が埋まっているからで……。 ・桜の木の下で復讐を果たした。ただこのままだと捕まってしまう。どうしよう。そうだ。このまま桜の木の下に死体を埋めれば……。 ・組のシマを巡った大勝負が桜の木の下で行われた。劣勢に立たされた男はイカサマを働くがそれがバレて相手の組に囚われてしまう。組の男は叫んだ。「こいつをこのまま桜の木の下に埋めてしまえ!」  そう。どう頑張っても死体を埋める話しか思い浮かばないのだ。私は短編小説を書いてはいるものの、苦手なジャンルがかなり多い。密室の観覧車で繰り広げられる底無しに怖いホラーやドラゴンに跨って遠距離の家に郵便を届けるような素敵でかつ重厚な世界観のファンタジー、甘い言葉が紡がれ続けるとろけるような恋愛短編など、私には書けない。  そして案の定、私の短編は落選した。  そして案の定、この回もかなりレベルが高い回であったようだ。 ・花見で一波乱、桜の精、死体が埋まっている、告白……と、どうしてもネタが似通ってしまうお題。 ・その似通ったネタの中から独自性を光らせ、グイグイと読ませる技量が問われた回である。 ・全体的に非常にレベルの高い回。選ばれた作品はどれも技あり!と言わせるポイントがあった。  講評を見る限り、とてもとても私の力では敵わない相手が揃っていたらしい。咲き初めには胸を躍らせ、満開の木の下では酒を酌み交わして人と語らい、そして散り際には切なくも美しいその姿を目に焼き付ける。私も含め多くの日本人にとって桜は身近な存在。それだけに「多くの作家たん」にとってストーリーをイメージしやすいお題なのだろう。勿論この「一般的な作家たん」の集団の中に私は含まれていない。
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