私の作品が輝くとき

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私の作品が輝くとき

 私の作品が「すーこん」の中で入選作の末席に加えて頂けるのは基本的に難しいお題のときだけだ。  たとえば「最弱集団」というお題だったとき。集団、ということはそれだけで複数名の描写が必要なため、規定字数である原稿用紙25枚程度の中で収まり切らせるのは至難の業だったのでは?という講評が載せられていた。実際のところ応募作品数も非常に少ない回だったらしい。私はこの中で武闘家、僧侶、魔法使いの3人パーティーの冒険譚を著した。全員がギャンブル大好きで莫大な借金を抱えて追手がやってきているという情けなさすぎる設定だ。好き勝手書きこれはさすがに入らないと思ったのだが、何故か選出された。 「とかす」というお題のときもそうだ。お題を見てから考えること2週間。私は昔プレイしたRPGに出てきた氷の中のダンジョンを思い出してそれをモチーフにテーマパークのアトラクションを脳内で作り上げた。物語の舞台はそのアトラクション。そこを巡る人間模様を描く作品を著したところ、審査員の目に留まったようだ。講評にはやはり「難しいお題だったと思いますが、皆様が様々な工夫をして取り組まれておりその様子が窺えました」とあった。私と同様、お題との格闘に苦しんだ人が多かったらしい。 「目の前が真っ白」という回については、ご飯という真っ白いキャンパスに人参、じゃがいも、豚肉、カレールウ、ガラムマサラ、ポテトチップスなど思い思いの食材を豪快に描き殴るが如くただただおいしいカレーライスのつくりかたを綴りまくった。あまりにも好き勝手書きすぎたためこれはさすがに無理だろうと思っていたのだが、何故か選ばれた。講評によると 「今回のような難しいお題の場合は小物などとテーマを結びつける小技が効いた人の作品が際立つ傾向がある」  とのこと。やはり審査員の方々としても難しいお題との認識がおありのようだった。  私はコンテストを入学試験と同じ「絶対評価を前提とした相対評価」と考えている。私みたいにグイグイと読み進めさせる筆力もなく、誰も思い浮かばないような斬新な切り口をバカバカと生み出せる発想力もなく、ページという平面の中で文字というアイテムのみを用い多角的な個性を引き出しキャラクターを動かすような人物造形だってお世辞にも得意とは言えない。激戦必至の桜のお題を前に私が選ばれる要素など皆無なのである。 「だったら見送って次の回に備えればいいのでは?」  確かにそういう人もいるだろう。  だがそれでも、私は悩んでいる。  私を悩ませているものは何なのか?  それも私は理解しているつもりだ。
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