桜の刻

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『花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに・・・』  遥斗は起き上がると、隣で窓の外を見つめる桜子に囁く。 『それは・・・、君が好きな百人一首の・・・』  桜子は外を向いたまま、『あなたはいつまでも、私の気持ちを弄ぶだけ・・・。私の人生を台無しにしても気にしないのでしょう』と皮肉を込めていう。  遥斗は桜子の白く透き通るような美しい背中に、自分の唇をそっと触れ、紅く跡が着くほど強くキスをした。 『やめて・・・。そんな気無いなら、私の前から消えて!』  遥斗は桜子の背中から香る色気に魅せられ、彼女を抱きしめる。 『彼女の事は・・・、忘れる。君とずっと・・・』と囁いたが、桜子は体を起こし、遥斗から離れ、『桜が散ったわ。もう、終わりよ・・・』と言い放つと、立ち上がり服を着始めた。  遥斗の視線は桜子の背中に向けられている。  彼の瞳には『手放したくない』という男の独占欲が感じられた。
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