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「俺の良縁を祈ってくださいよ聖女サマ」
「……そうすると縁がまず切れますけど」
「それはもう切れてますので」
ん? とセレスは赤い顔のままでシークを迂闊にも見てしまう。
「貴女に想いを告げられない立場とは縁切りができましたからね。後は俺が欲して止まない人との縁が結ばれる様、どうか祈ってください。もちろん、俺自身の努力によるものでしょうから、そこは全力で分からせます」
「最後! 最後が不穏!!」
「気のせいです」
断言されてこんなにも不穏な気配が増す事があるのだろうか。セレスは感情の起伏の高低差にほとほと疲れてしまう。動いてもいないのに、すでに全力疾走した後の様な疲労感だ。
「……本当に良縁を祈っていいんですか?」
「是非ともお願いします」
「結ばれたら最後、切りたいと思っても切れませんよ?」
シークは背を起こし、改めてしっかりとセレスに向き合う。
「そもそも俺が渇望して結んで貰うんです、切りたいとは思いませんし、切らせません」
ううう、とセレスは短く呻き声を上げ、やや間を空けて小さく祈りの言葉を捧げる。
「――あなたに、素敵なご縁がありますように」
こうして、縁切り聖女による縁結びはこれまでで一番の効力を発揮して二人に良縁をもたらし、その名をいつまでも語り継がれる事となった。
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