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 セレスが口を挟む暇すら無い。少女は去り際にもう一度セレスに抱き付き、何度も礼を口にしながら迎えの従者に引き摺られる様に去って行った。  ぽつんと取り残された形になったセレスの耳に、ややあって低くくぐもった音が届く。  恨めしげに振り返れば、そこにあるのは案の定、噛み殺しきれない笑いに苦しむ青年の姿がある。 「すっげ……ちょ、聖女サマ、記録更新……!」  長身を折り曲げて笑い続ける青年の耳は縁まで赤く染まっている。チラリとこちらを向けば、目元に涙まで浮かんでいるのが分かり、セレスは無言で頭に被っていた儀式用のベールを外した。 「縁切り最短記録更新おめでとう!!」 「縁切りじゃありません!!」  青年の手首にベールを巻き付け、そのまま肘の方、から少しずらした外側へと折り曲げる。青年の傾ぐ身体に合わせて片足が地面から浮く。残った方の足の膝裏を渾身の力で蹴り飛ばせば、体躯の良い相手だろうと転倒は免れない。  ドスン、と重く痛そうな音が教会の内部に響き渡った。
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