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「とはいえ、自分のそういった気持ちに気付いたのはこの一月だろうし、自覚したと同時に俺はいないし、じゃあこの気持ちも終わりかって、そうやって自分の中でひとまず整理した時に俺が来るしこんな事言い出すしで、聖女サマの感情の起伏が大変そう」
「ほんっっっとうにむかつくくらいその通りですし! 筒抜けなの腹が立つし!! っていうかもう……もうーっっっ!!」
人は羞恥で死ねるのでは、と思う程にセレスは今恥ずかしすぎて死にそうだ。
「聖女サマ真っ赤になって可愛いですよ」
「それはからかってるやつですよね!?」
「半々ですね、すみませんこの二年で染みついた癖がどうしても」
肩どころかもう上半身が大きく揺れている。楽しくて仕方がないらしいシークの姿に、セレスはなんとか一矢を報いたい。
「そう……そうですよ! わたしはもうあなたへの気持ちはきちんと整理しましたし、そもそもあれはまだ恋とかそういうのに育つ手前のものでしたから。うん、なので、あなたのことはもう……大丈夫です!」
「そんな聖女サマを口説きに来たって言ってるんですよ」
ソファに腰を掛けたまま、前屈みの体勢でシークはセレスを真っ直ぐに射抜く。
「一旦整理したならもう一度全力で乱します。気持ちが育ってなかったって言うなら、育てますよ最後まで……貴女が、俺なしではいられなくなるくらいに」
「……最後が不安でしかありませんが?」
「依存させまくりたいですよね」
「その発想がこわすぎなんですけど!?」
「なにしろこの二年で拗らせてしまった所がありまして」
ええええ、とセレスは軽く引いてしまう。何故だ、どうして急にこんな事に、と頭の中がグルグルと回る。すると突然閃いた。なるほどこれだ! とシークを見れば、口を開く前に鼻先で笑われる。
「絶対に違うんですけど、まあ、話があるならどうぞ?」
これまた筒抜けだ。この時点ですでに自分の考えが間違いなのかもしれない、とセレスの自信はすでに萎みまくっているが、それでも「もしも」に賭けてみる。
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