19(終)

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「それってつまりは王命にしようと思えばできるっていう脅しなのでは……!?」 「まあそうとも取れますよね」 「他人事みたいに言う!」 「自発的に俺の所に来るのと、国家機密の保持の為だと勘違いして来るのと、王命、の三択ですがどれにします? 俺としては一番目をお薦めしますし、俺の希望でもありますが」 「それ選択肢があるって言えます!?」 「聖女サマ的にも一択だと俺も嬉しいです」  本当に全てが筒抜けだ。セレスは眉間の皺を深く呻き声を上げる。  いや、ここで片意地を張る必要はない。むしろこの勢いに乗った方が自分としてもありがたいとは思う。とてもじゃないが素直に自分の気持ちを伝えるには、あまりにもセレスは混乱と羞恥とあとやっぱり意地が出てしまう。  これまで散々言い合っていたのだ、正直に答えるのはとにもかくにも悔しい。  王命にだってできますよ、という態を示してはいるが本人にその意思が無いのは流石に分かる。天才の閃き、と浮かんだ理由も彼の言う通り甚だしい勘違いだと自分でも思う。  せっかくシークが褒めてくれた素直で裏表が無いと言う性格も、今は真逆でちっとも素直になれない。しかし、その素直になれないという事がつまりはどういう事なのか。それが見事に彼に伝わっているし、意味も理解されている。 「即答で拒絶の言葉が出てこない時点で答えてる様なもんですよね」 「自惚れ屋!!」 「違うんですか?」 「ち……がわ、ない、ですけどおおおおっ!!」  本来なら甘ったるい空気を醸し出すはずだろうに、室内に満ちるのはセレスの心底悔しがる声だ。 「なんだろう……なんだろうこの……どうしようもなく負けた感じ!」 「聖女サマ負けず嫌いだもんなあ」 「そんなことありません!!」 「あれだけポンポン言い返しといて何言ってんですか。自分に悪意しか持ってないヤツにまで喧嘩ふっかけるし。これを負けず嫌いと言わずして何と?」  いっそ威嚇しそうな勢いでセレスは唇を噛み締める。その姿は完全に手負いの獣だ。もっともシークの目には、野生の小動物が餌を抱き込んだまま毛を逆立てている様にしか写っていない。 「馬鹿にされている気がする……」 「聖女サマ可愛いなあって見てるだけです」 「なんでもかんでも可愛いって言えばいいと思ってませんか!?」 「仕方ないでしょう、何やったって貴女が可愛くて堪らないんですから」  ひぃ、と掠れた悲鳴を上げるセレスは耳の縁まで赤く染めている。
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