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「別にこの人、わたしの専属護衛というわけではないですし」 「俺はそれでも構わないんですけどね」 「四六時中いられるとか目障りこの上ないので結構です!」 「聖女サマわりと俺に対するアタリがきつくないですか?」 「あなたがそれを言いますか!?」 「セレス様本当に大丈夫ですか? やはり正式に護衛の配属を願い出た方がよろしいのではありませんか?」  アンネがやたらと心配するのも当然である。なにしろ彼女が初めてこの教会を訪れ、縁切り、もとい、良縁をセレスに祈ってもらった時に問題が起きたのだ。  かつてアンネには婚約者がいた。これがまたとんだ屑と呼べる程の相手であり、アンネという相手がいながら浮気を繰り返し、それどころか浮気相手の一人と結託してアンネのよからぬ噂を社交界に広め回っていた。  貴族にとって醜聞など格好の餌食にしかならない。憔悴しきったアンネは屋敷に引き籠もる様になり、やがて寝込むまでになった。そんな娘を心配した母親が気晴らしにと、無理矢理連れ出した教会のバザー会場。そこでアンネはセレスと初めて出会ったのだ。  孤児として教会で育った異色の聖女として、すでにその名前だけは広まっていたセレスであるが、明るく元気なセレスの姿にアンネは心を奪われた。セレスもまた、貴族のご令嬢でありながら孤児相手に心優しく接するアンネに惹かれ、二人はすぐに身分を越えた友情を育む様になった。  セレスがアンネの窮状を知ったのはその後である。だからセレスはアンネの為に祈った。  どうかこの心優しき、美しい人に纏わり付く悪縁が切れ、良縁と結ばれますように――と。 そしてその祈りは聞き入れられた。驚く程の速度で。  アンネの婚約者が繰り返していた悪行が全て露見したのだ。浮気どころの騒ぎでは無い。賭博により借金が嵩み、それにより家の財産を使い込み、少しでも金銭を得ようと、事もあろうに見目の良い孤児や貧しい家庭の子どもを誘拐して売買しようとしていた。  人身売買については、寸前で情報を得た警邏隊により阻止されたので犠牲になる子どもは出なかった。しかし主犯格であったアンネの婚約者は逃亡し、最終的にセレスの前に姿を見せたのだ。 「――おまえ……おまえが! 余計なことをしたから!!」
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