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「なんでも言ってくださいアンネ様。聖女としての役目はもちろんですが、わたしはアンネ様の友人でもあるつもりなんです。友達が困っていて、それにわたしの手が必要だったら、わたしは喜んで手を貸しますよ」
途端、アンネの顔が喜色に満ちる。ここまで素直に感情を表す彼女も珍しい。常に淑女としての姿勢を崩さないのは立派だと思うけれど、セレスとしてはこうして喜びも悲しみも見せてくれる方がとても嬉しい。
「聖女サマは感情が表に出るってか裏ないですもんね」
「ほんっっっっとうに人の頭の中見るのやめてもらえます!?」
「だから、そんな真似しなくったって聖女サマが顔に出すんですってば」
「セレス様!」
「はい!」
いつの間にかアンネは席を立ちセレスの前に跪いていた。
「アンネ様立ってください! ドレスが汚れてし」
「わたくしの聖女、そして、わたくしの大切な友人である貴女にお願いがあるの」
感情が余程昂ぶっているのだろう、アンネの瞳が潤んでいる。セレスの両手を握り、自分の胸元に抱き込む様にしてセレスを見つめるその威力の凄まじさといったら。
麗しき令嬢からの上目遣いでの懇願である。これを拒絶できる人間が果たしているのだろうか。聖女だなんだと言われようとも所詮中身は元気が取り得の一般人であるセレスには、これに対抗できるだけの手段など無い。そもそもからして断るつもりも無かったのだから、ただただ美しさの前に「ひあああ」と気の抜けた声を漏らすだけだ。
「セレス……」
「なっ……なんでも言ってください大丈夫ですわたしでお役に立てるならばなんだってやってみせましょう!」
「わたくしの婚約披露のパーティーに貴女にも参加してほしいの」
「婚約……え!? アンネ様婚約なさるんですか!? わー! おめでとうございます!! 素敵!! やったー!!」
身構えていた所にまさかの答え、でセレスは思わず立ち上がった。そのままアンネの手も引いて彼女を立たせると、ピョンピョンとその場で跳ねて喜ぶ。
「そうですよねこんなに素敵なアンネ様なんですもの、婚約者の一人や二人や三人四人でてきたっておかしくないし! なんならこの二年間そんな話がでなかったのがおかしいくらいだし!! この国の男性は一体なにをやってるんだろうって司祭様や他の皆と話をしてたけど、ついに!! やっと!!」
「えらく俗っぽい話してますね教会の面々」
「あ、でも待ってくださいこれって喜んでいい方です!? 前みたいにろくでもないのが相手なんでしたら、わたし渾身の縁切りをかましますよ!!」
「自分で縁切り言ってんじゃんなー」
いちいち後ろからの突っ込みが五月蠅くはあるが、今はそれに構っている場合では無い。
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