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会者定離-えしゃじょうり-★7
夜空はどの世界でも美しい
星々は、変わらぬ輝きに満ちて
暗闇は、全ての穢れを帳の中に隠してくれる
怒り狂うリュウの身体を寝台にやっと縛り付け
別れの時を受け入れたアラステアだった。
束縛は自由の入り口だ
普段二人の時には使うことのなかった異能を使い
リュウの口は閉じさせられ、ゆっくりとくちづけを落とす。
食物を摂るための行為と同じなのに
今は小さく柔らかな唇を吸う度に身体が熱くなる。
「不思議なものだ…」
こうした感情が、いわゆる愛なのかはわからない。
いや、器となる身への情けは愛ではないだろう。
ただ、リュウが壊される運命ならば己の手で壊してやりたいと願った。
帝王アラステアとしてでなく、今はわがままなひとりの男としてここにいる。
そう自覚しながら、身動きできないリュウの身体の奥深くに、静かに異能の力を注ぎ込んでいった。
#1
いつもと違う拘束された状況やアラステアの空気を察知して、リュウと呼ばれた娘は静かに目を閉じた。
逆らうことの出来ないくちづけを受けながら、娘は死を悟ったかのように身体の力を抜いて身動きひとつしなくなった。
いつも丁寧にただ身体を浄めるその指からは、熱を持ったエネルギーが放たれ、触れられる場所がほのかなピンク色に変えられてゆく。
アラステアの唇は、娘の小さな唇を離れると滑るように長く白い首筋に沿って熱と力を注いでゆく。
ゆっくりと上下する豊かな胸を両手ですくいあげながら、その頂きの小さな真珠のような突起を口に含む。
もし母がアラステアの生と引き換えにこの世を去る事が無ければ、我はこのように乳首を吸い、豊かな重みと弾けんばかりの弾力を感じさせるこの胸の中に作られるであろう、溢れんばかりの乳を味わったのだろうか?
アラステアはその真っ白な胸を揉みしだき、出ることのない母乳を欲する赤児のように乳首を吸い続けた。
娘の身体は身動きせずとも、赤児に反応するかのように乳首は固く立ち赤々と隆起してくる。
夜空の星々に照らされたアラステアの銀色に瞳には、そうした女の身体の変化が奇跡のように映った。
今までどれほどの器を壊してきたのか数えきれないが、こうして抱いた女の身体の変化に一度でも気づいたことがあるだろうか?
#2
アラステアがその異能を、リュウの身体を慈しむように触れながら、まるでアロマオイルを馴染ませるようにゆっくり力を加減して注いでいった。
力を注がれる毎に、エメラルドグリーンの長い髪は波に遊ばれるように広がり揺蕩う。
壊れる気配は今のところない。
それどころか、海の底のような静寂さを湛えた中で、二人の身体は乳白色に輝く夜明けを迎える空のように、美しく生命の芽生えを感じさせていた。
細くしなやかな両脚は今は開かれ、隠す物すらなく神秘の茂みの奥へ奥へと、アラステアを誘うがごとくその扉を惜しげもなく見せていた。
男の自分達には無く、命を生み出す異界への入り口。
「かのように美しい可憐な造作で、なんと儚い色合いであったのか…」
きっとどの器にも同じ臓器があったはずだ。
なのに、ただの器と思っていた時とは違う、脆く切ない姿に、愛しさと憐れみがアラステアの胸を打った。
涙の雫のように濡れる異界の扉を、その指で優しくなぞった。
身体を綺麗にしてやるという時にはただのちっぽけな臓器でしかなかったのに…
心とは不思議な働きをする。
#3
初めて恐れというものを感じて、アラステアはリュウとひとつになる事を躊躇った。
失う事への恐れ…
帝王アラステアは、悠久ともいえる歳月の中で、命の儚さや不条理を知り尽くし、悲しみこそあれど恐れを感じることはなかった。
こんな小さな代用品などいくらでも見つけられる。
例え、新種の生命だとしても謎を解いてしまえば、新しく生み出せばいい。
いつも割り切れた感情が、どこをどうしても探せなかった。
その戸惑いが、恐れにつながっていく。
それでも、帝王としての責務がある。
意を決して、娘のなめらかで陶器のような下腹部に己の身体を重ねる…
と同時に、熱く燃えたぎる異能を込めて、己の一部を娘の身体へと突き刺した!
小さな小さな異世界への扉は、無残にもあっけなく破壊され、身体の奥深く押し広げられてゆく力によって激しい痛みを伴って娘の身体を貫いて行った。
「ああ!!!」
アラステアが初めて耳にしたリュウの声は、苦痛に歪んだ表情と相まって、彼の理性を一瞬のうちに溶かし去ってしまう。
彼の激しい異能が、リュウの身体深くに流し込まれる度に、その熱はアラステアの身体にも深く刻まれて、恍惚とした力が再び湧いてくる。
異世界の細い道は、異能を送れば送るほど、壊れるどころかアラステアの身体の一部を優しくしっかりと包み込むように、熱をおびて柔らかく強く捉えて離さない。
まるで全ての力を飲み干そうとするかのように…
まるで最初からひとつの身体であったかのように…
果てしなく娘の身体はアラステアを受け入れ続けていった。
#4
アラステアの異能の力が尽きて寝入ってしまうまでに、どれほど時間が経っていたのだろうか。
応答の無い時が長く続き、さすがに心配したエドマンドが禁を犯して、許しなくアラステアの居室に入った時には、安らかな寝息をたてて自分のベットにひとり深く眠る帝王の姿があった。
ほっとしたのも束の間、器となる女の寝台には拘束具と寝具の僅かな出血痕が残るだけで、その姿は忽然と消え失せていた。
やはり器は壊れたのか…?
あまりに幸せそうに眠る帝王の顔を、もぬけの殻の寝台と見比べながら、どう立ち回るべきか珍しくも咄嗟に思い至らないエドマンドは、その場に立ち尽くしてしまった。
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