たまご好きの王様

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 あるところにたまごが大好きな王様がおりました。王様はとりわけ目玉焼きが好物でした。  目玉焼きには新鮮で質のいい卵がひつようです。お城にはニワトリ小屋があり、良いたまごを産むめんどりが国中から集められていました。  ある日突然、とくべつおいしい卵が小屋に現れるようになりました。他のたまごよりひとまわり大きく、黄身は濃いだいだい色で、そのたまごを使った目玉焼きは夢のようにおいしいのです。  このたまごを産んだめんどりは、とくべつの小屋を与えて、いっとう大事にしなくてはならないと王様は思いました。そして家来に、どのめんどりがそのたまごを産んだのか、見張るようにさせました。すると、とくべつなたまごが現れなくなりました。めんどりたちは普通の(それでもとても質がよいのですが)たまごしか産みません。  不思議なことだ、と王様はおめかけさんに相談しました。王様は王妃様との間に子どもがおらず、跡継ぎを得るために国中から美女を集めて後宮を作っていたのです。  相談されたおめかけさんは、たいそう優しく美しい娘で、王様にとても愛されておりました。そのためほかのおめかけさんには、ひどく嫉妬されていました。彼女は嫌がらせに苦しみ、王様に、お渡りを減らしてほしいとお願いしておりました。しかし王様はわがままで、彼女をいつでもそばに置きたがりました。  王妃様はよい人で、彼女をなぐさめてくれましたので、彼女は後宮でのくらしに耐えることが出来ました。  ある朝、ほかのおめかけさんの下女が、彼女の部屋になにか隠しごとがないか探ろうとしました。すると、割って捨てられたたまごが、寝台のしたの箱に隠されていたのです。それは例のとくべつのたまごに違いありませんでした。  告発され、彼女は追放されることになりました。最後の夜、彼女は王様に、なぜこんなことをしたのかと聞かれました。無言で頭をふった彼女は、たまごを王様に渡しました。 「これを王妃様と一緒にあたためてくださいませ。もしかしたら、とくべつのたまごを産むめんどりになるひよこが産まれるかもしれません」  王様はその通りにしました。  するとたまごから、人間の赤ん坊が孵りました。  赤ん坊は玉のように美しい男の子でした。王様と王妃様は、この男の子を二人の間の子どもとして育てることに決めました。男の子は賢く強く成長して、立派な王子様に育ち、となりの国のお姫様と結婚することになりました。  王子様の結婚式の前の日の夜、王様は王子様とふたりで話をしました。王子様はそこで、自分はたまごから孵ったのだと聞かされてびっくりしました。王子様に、王様はいいました。 「そんなわけだから、もしかしたらお嫁さんがたまごを産んでしまうかもしれない。そうしたら、落ち着いてたまごを温めてやるんだよ。しかしたまごが産まれすぎても、今度は世継ぎ騒動になるだろう。だから、産まれすぎたたまごはわたしのところに持ってきなさい」  王様は、たまごが大好きなのです。
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