王竜の伴侶

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王竜の伴侶

 渡された抱えるほど大きな卵には、複雑で綺麗な銀の唐草模様が入っていた。  それを見た瞬間、十三歳の歳を迎えた少女、(すい)は絶句した。  この森深き偉傑華(イジュカ)の地では民は皆、竜と共に生きる。  子供は皆、十三歳になると同時に狼神竜(ランシェンロン)という狐や狼に似た竜の卵を与えられ、その卵から生まれた竜を生涯の友とし、立派に育て上げることが成人の証とされる。  しかし、翠に与えられたのは唯の狼神竜の卵ではなかった。 「交換してきて!」  半泣きで卵を運んできた父に頼んだ。 「無理。里長からの推薦」  速攻で返されて絶望した。  父も青天の霹靂だったのか、いつも脳天気な程に朗らかな顔色が険しく曇っていた。  それも当然である。  その卵に刻まれた模様は全ての狼神竜を統べる王竜の、その伴侶となり得る仔であることを示していた。  同時にそれはこの地にある二つの里、羽偉(ウイ)傑蓮(ジュレン)を取り纏める総領、榧ノ宮(かやのみや)の花嫁候補であることを意味していた。
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