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「そうです。リアナ様の護衛である貴方が行くのですよ」
護衛の男は、酷く頭を抱えた。溜息を吐くと、壁に額を当てる。いつもなら、気弱なお母様に伝えるだけで済むけど、今はお父様がいる。簡単には納得してくれないだろう。少しだけ同情するかも。
「分かったよ…… 姫様。今日は私から皇帝陛下へ上手く伝えておきます。しかし、明日も同じように出来るとは思わないで下さい。次こそは本当に帝立病院の者達が来るとお考え下さい。よろしいですね?」
「分かってる…………」
姫はいつになく弱気な態度で応えた。分かってる…… いつも私のわがままが曲がり通っていたのも、お父様の目がなかったからに過ぎないことも。今日、お父様に恥をかかせてしまったことも全部分かってる。
それでも、私は今日この部屋から出るわけにはいかない。本が、この部屋にある限り、貴方達が、この部屋にいる限り、一瞬でも部屋を空けるわけにはいかない。姫は、使用人達一人一人に視線を送る。誰なら信用できる……
「リアナ様、着付けが終わりましたよ。昨日の物は、すでにビアンカ達が洗濯に出してしまったようですので、いつものとは少し新しいですが。アロッサ、片付けの準備に入りますよ」
「は、はい! それじゃ、私は洗濯に……」
アロッサは、どこか慌てた様子で衣類を両手いっぱいに抱えた。
「待ちなさいアロッサ」
姫は口を開いた。突然のことに戸惑いを隠せないアロッサに姫は続けて。
「ついでに、一つお願いしても良いかしら? ずっと部屋に居ても退屈で仕方ないのよね。だから、図書館から適当に何冊か本を借りてきてくれない? 出来たら、この位の分厚い本が良いんだけど良いかしら?」
「本…… ですか?」
「何をしているのですかアロッサ? 洗濯は私がやっておきますので早くリアナ様のため本を持って来て差し上げなさい」
「…………」
「アロッサ……?」
アロッサは唖然とした態度で視線を姫に向ける。そこに、以前のような動揺する素振りはない。ただ純粋に疑問を投げかける。
「リアナ皇女………… 本が読めたんですか?」
「…………」
「「……」」
"舐めんな"
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