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「リアナ! 久しぶりね」
私の姿を確認するや否やテーブルの席についていた我が母、皇后イザベラが複数のメイドを連れ、こちらへと急ぐ。
姫とは打って変わって皇后のドレスは強欲な貴族の如く厚く豪華な物であった。その顔立ちは決して悪くはないが疲れを隠しきれないのか、いつになく老けて見える。表情も比較的穏やかであまり権威らしいものは感じられない。単に疲れているだけかもしれないけど。
「しばらく見ないうちに、また一段と綺麗になって。母として本当に誇らしいわ。髪も少し伸びたんじゃないの?」
「いえ、お母様。3日ほど前に切ったばかりですわ」
「あ、あら。そうだったの…… そ、そうよね。私ったら、まだ疲れてるみたいだわ。そうだわ、朝食を摂りながら少しお話ししましょう。今日はリアナの好きな苺ジャムを用意したのよ。一緒に食べましょう」
「お母様。前も言いましたが、リアナはジャム全般が好きではありません。朝食にはいつもマフィンをいただきます。ぜひ覚えていってくださいね」
決して姫の優しい笑みが崩れることはなかった。どんなに、その場が凍りつこうとも姫の笑顔は暖かかった。
姫は、それ以上何か言うわけでもなく静かに自分の席の前に立つ。皇后が寂しげな様子で姫の前の席に座ると、それを合図に姫も席についた。護衛のオルディボは扉付近で静かに待機している。
「それで、リアナ。何か変わったことはなかったかしら? 何かあれば話してほしいわ」
「特にありませんわ、お母様。いつもどうりです」
「そう……」と皇后は言葉を失う。テーブルの上の食事だけが減り、次第に時間が過ぎる。まるで食事に手をつけない皇后と違い姫は美味しそうにマフィンを嗜む。何か言いたげな皇后には見向きもせず、姫は朝食を終えた。
「今日はあまり食べる気分ではないわ。この後の社交会の準備もありますし、このくらいにしましょう。リアナ、貴方も今晩のために早めに準備なさいね」
「はい。そうさせていただきますわ。ご馳走様でした」
姫は皇后が席を立つのを確認すると、すぐに立ち上がり扉へと急ぐ。
まるで、一刻も早くその場から逃げ出したいかのように。すぐさま、扉が開くと姫はオルディボに視線を向けダイニングルームを後にした。
しばらく無言だったオルディボもある程度の距離を進んだ辺りで口を開いた。
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