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思えば、初めの頃はロクに相手にされず、皆が私の話を聞くや否や、笑い話にして吹き飛ばすような日が続いていたものだ。
数人ばかり "僕も私も" と共感してくれる連中が出てきた事もあったが、いざ実行となるや否や、途端にありもしない尻尾を巻いて逃げてしまう有様だった。どうやら度胸も勇気も退化しているらしい。
それでもめげずにやっていると、ようやく私の話を真面目に真摯に信じてくれる、聞いてくれる人間が現れ始めた。
しかし彼らが私にした対応という奴は、ごく一部の例外を除いて、まるで道端に転がる生ゴミに対してそうするような厭忌か、はたまた私が人として何か欠落した欠陥品であるかのような哀愍であった。
別に怒る気は無い、無いのだが……気になった。
彼らはこの瞬間、画面の向こう側にて光り輝く今を観て、何を思うのだろうか。何を望むのだろうか。
嫉妬?、怨嗟?、驚愕?……もしや見直してくれるなんて事も有るのだろうか。
それとも……何も、変わらないのだろうか、
それだけは……なんか…
嫌だな、」
──……っ!、
いつのまにか口から溢れた後ろめたさと幼さに、ハッとして口を覆い、マイクを遠ざける。
深呼吸を数回、それでも尚 落ち着かぬ動悸、虚無から来る迷いに、私は心の底から恐怖し慄いた。
今更、でもしない冷や汗をハンカチで拭いながら、どこか逃げるように、助けを請うような思いで、再び一歩前、己が栄光の光る場所、ショーの舞台へと飛び出した。
『キャァァァアアアアアアア!!!』
我ながら口元が不気味に歪んだ。一瞬で分かるんだ、間違いなく "音" がしたから。
観衆たちは変わらず、いや寧ろ先程より一層 烈しさを増して、その各々が瞳に私を映した途端に轟き出したのだ。
さぁ、咲き乱れる歓声も、叩き付けられる罵声も、撒き散らされる悲鳴も、掻き回される渾沌すらも……総てをその一身に受けて確信しようじゃないか。
何を況や、今この世に興る熱狂ぞ何一つ敵わない。世界の中心は此処にあるのだという事を。
今宵 新月、天国に一番近い場所、私は世界のどんな存在よりも煌めくのだという事を。
……最後のチェックと行こう。
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