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星弥は北海道への進学を希望していた。仲良くなる前から人づてに聞いてはいたが、本人から聞いても答えは同じだった。アイスホッケー部のある高校が一番多くあり、中学生以上の北海道勢は無敵だ。関東の有名大学アイスホッケー部員の出身地は、釧路、帯広、苫小牧……北海道ばかりでわかってはいてもため息が出る。
たまに、大阪とか、福岡とか、岡山出身なんて見かけるとずいぶんほっとしたものだった。地方勢を見ると妙な仲間意識が湧いた。
星弥は北海道の高校で力をつけて、東京の大学に進学するつもりだと言っていた。すでに何度も海外遠征や北海道遠征、そういうものを繰り返し行っていた。俺も参加している方ではあったが、彼には負ける。
*
「何で北海道行かないの」
急にそんなことを尋ねてきた星弥に、内心驚いた。今まで俺の進路に興味がある素振りなんて一度もなかったからだ。どちらかというと、自分の身の振り方や、その進路に関する前向きな意見など、自分のことで頭がいっぱいなような気がしていた。夢と希望に満ち溢れていた、眩しいくらいに。
「北海道っていっても広いし、一つくらいダメでもホッケー部のある高校もたくさんあるよ」
答えに窮していると、なぜか俺が受験に失敗したみたいな流れになっていたが、訂正する気力もそれほど残っていなかった。
星弥はホッケーに関しては悩むこともないほど、目標が定まっているんだろうと勝手に思っていた。そのときはずっと、そう思っていた。でも本当はどうだったのか今となってはわからない。
「何でって……」
「涼は上手いんだから北海道とか、北海道じゃなくても栃木とか関東とか行った方がいいよ」
星弥は希望どおり北海道の高校へ進学が決まり、俺は地元に近い高校の進学が決まっていた。
アイスホッケー部ができて数年、しかもそれほど強くはない学校だった。だが、オファーをもらったので特待生で入学できるし、何より地元に近いのがうれしい。
進学先の高校でそれなりに活躍して、高校の知名度を全国に知らしめれば、少しは地元に貢献できるような気がしていた。それで地元でのホッケー人口が増えるならなおよい。そのときはそんな風に、甘い夢物語みたいなことを考えていたような気がする。
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