ネックガード

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 手で顔を触るとものすごく濡れている。気がつかない内に泣いていたのだ。手のひらがてかてかと水っぽい光を放っていた。 「……大丈夫」  大丈夫とは言ったものの、何が大丈夫かわからなかった。大丈夫ではないだろう。星弥はもうこの世にはいないのだ。もうこの地を歩くことも氷の上を滑ることもない。俺がどんなにがんばって練習して一回戦を勝ち上がっても、全国で会うこともない。どこにいても、会うことはない。  俺が泣いていても、ご両親は笑みを絶やさなかった。 「すみません。俺なんかが」  顔を押さえながらぺこりと頭を下げた。 「全然いいの。ゆっくり星弥に挨拶していってね」  親より泣いている自分が恥ずかしかったが、恥ずかしいとか言っている場合ではなかった。 「星弥とは……全国で会う約束をしていました。約束を果たせず申し訳ないです。今年こそはって思ってたんですけど」 「星弥も楽しみにしてたわ。今年は戦えそうな気がするって。あいつは本気出すとヤバいって笑ってたのよ」  それを聞いてまた胸が熱くなり、何とも言えない心地がした。何で全国で会う前に死んだりしたんだ。 「約束守れなくて、不甲斐ない俺で……申し訳ないです」  途切れ途切れに放った言葉にも、ご両親は微笑んで聞いてくれていた。星弥と話しているような気持ちになった。    
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