桜の木は必要ですか?

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 私は授業を受けている時に向かいの校舎に草壁君がいるのに気づいた。草壁君は私の密かな思い人だ。  三階の校舎の窓から草壁君が授業を受けているのがわかる。清純で女性のようななめらかな髪が綺麗だった。  でも、その時に思った。桜の木が邪魔なのよ!  校舎の間に聳え立つ桜の木が邪魔で草壁君のかっこいい顔が見えない。桜が嫌いになった。授業中だからあんまり顔を動かせない。 「この数式においては何が必要で何が不必要かを見極めないといけない。不必要なものを答えなさい。早川さん」  突然、先生に呼ばれて私は授業を聞いてなかったので何もわからなくて思ったことを答えてしまった。 「桜です!」  教室中が静まり返った後、笑いの渦に包まれた。先生もクラスメイトもげらげら笑っている。 「なんで数式に桜が出てくるんだ。早川さん、授業をちゃんと聞きなさい!」 「はーい」  私は桜のせいだと思いながら、桜の木から垣間見える草壁君を眺めていた。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加