6人が本棚に入れています
本棚に追加
「急にお休みをいただき、ご迷惑をおかけしました。すみません」
星野真里はそう上司に頭を下げながら言い、地元の特産品であるリンゴを使ったお菓子の入った箱を手渡す。
「これ、よかったら皆さんで食べてください」
真里はそう言い、無理やり口角を上げる。心は笑いたくないと叫んでいる。だが、今は自分の住むマンションの一室ではない。気持ちを殺せと自分自身に命じ、拳をただ握り締める。
「大丈夫だよ。それよりお父様とお母様の件、ご愁傷様でした。無理しないでね。お土産、わざわざありがとう」
上司は心配そうに言い、真里はお礼と大丈夫だということを言い、自分のデスクへ座る。デスクへ座るとすぐに周りの人に「大丈夫?無理しないでね」と言われ、ここでも作り笑いと嘘でやり過ごした。
「ハァ……」
周りにいる人たちに気付かれないよう、真里はこっそりと小さくため息を吐く。息を吐くと、ジワリと目が熱くなっていきそうになり、慌てて目元を強く押さえた。
最初のコメントを投稿しよう!