父の味、母の味、私の味

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二週間ほど前、神奈川の会社で働いている真里の元に警察から電話があった。警察からの電話に出た真里は、警察から言われた言葉に目の前が真っ白になった。その内容はーーー。 「ご両親が交通事故に遭われて、病院に搬送申ましたが、亡くなりました」 真里の両親は、近所でも有名な仲のいい夫婦だった。お互い料理が好きで、大学生の頃に通い始めた料理教室で出会い、大学を卒業すると同時に結婚した。この馴れ初めを、真里は子どもの頃に耳にタコができるほど聞かされてきたため、よく覚えている。 料理はいつも父と母が交代で作っていた。料理だけでなく、たまにデザートまで作ってくれたこともある。そんな二人の間に生まれたというのに、真里は料理は苦手で、料理を作れないところか、薄力粉が何かも知らないまま大学進学のために家を出て、社会人として働き始めた。 真里が働き始めてから、両親は「やっと子育てが終わった」と喜び、遠出をしたり、旅行に行くことが増えた。 今回の交通事故は、二人が温泉旅行に行った帰りに起きた。高速道路を走っていた二人の乗った車にトラックが突っ込んだのだという。
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