最後の……

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 全身から明るく人懐っこい性格を醸し出す男が現れて、黒樹は実に嫌そうな顔をして、彼を見た。 「見てわかると思うけど、来客中」 「あぁ、見てわかるし、誰か知ってるよ」  同居人の不機嫌な様子を気にすることなく、楓はニコニコと笑って黒樹の後ろにある棚へと歩み寄る。棚にはコーヒーメーカーとカップが少し置かれていた。楓は知った様子でカップにコーヒーを注ぐ。 「ミルクたっぷりのカフェオレなら作れるよ?(らく)くん」  楓が振り返って少年に声をかけた。  少年は、まだ扉のそばに立ったまま動かないでいた。  黒樹は、楓と少年の様子を交互に見て、それから小さくため息をついた。そして、トントンと丸テーブルを指先で叩いた。 「とりあえず、こちらへどうぞ、お客様」  少年・楽が丸テーブルについたことを確認して、楓は、カフェオレを作るため住居スペースへと消えた。 「キミの捜しものは?」 「…………夢、を」 「夢?」 「学校で、進路調査があって。何を書いたらいいか……」 「好きなものを書けばいいんじゃない?」  やりたいことや興味があることを――――ただ、そうではないということを、黒樹はわかっていた。それなら、ここには来ない。 「また、そういう意地悪言う〜」  住居スペースとの堺に立って、楓が黒樹を見ていた。 「意地悪じゃない。進路調査に何を書くかなんて、僕に聞くほうが悪いでしょ」 「そうか?」  間違ってないとでも言いたげな言葉を残して、楓はもう一度、住居スペースへと引っ込んでいった。すぐに戻ってきた彼の手にはマグカップ。ホットミルクのいい匂いがしていた。コーヒーメーカーからブラックコーヒーを注いで、楽の前に差し出す。 「熱いから、気をつけて」 「……ありがとうございます」
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