最後の……

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 黒樹は、カフェオレに一生懸命息を吹きかけて覚ましている楽を見つめた。  十四年――――人生を決めるのに、それは適当な時間なのか、それとも早いのか。黒樹には、よくわからなかった。  ここには、人生に迷い、道を探す人もよく訪れる。特に、楓がここで暮らすようになってからは。 「何を書いたらいいのか分からないって……それはこの先何をして生きていくのか分からないってこと?それとも、そのための手段がわからないってこと?」 「…………えっと……」  ためらう楽の言葉を、黒樹はじっと待っていた。 「何をしたらいいのか、わからないっていうほうです」 「それを捜したいってことでいい?」 「……はい。あの……なにをしたいのかわからないって、やっぱり、おかしいですか?」 「まだ見つけてないだけでしょ?別に、おかしくないんじゃない?」  なんの感情もない声で告げて、黒樹は静かに水晶板に触れた。  ためらいがちでカフェオレが入っていたカップを見つめていた楽が、目を丸くして顔を上げ、黒樹を見た。  黒樹の後ろにいた楓が、嬉しそうに誇らしげに笑っていた。 「楓、顔がうるさい」  全く振り返っていないはずの黒樹が、楓に冷たく言い放つ。 「わるい、わるい」  見られていないことなど気にすることもなく、楓は笑いながらそう返した。 「ふーん……」  水晶板を見つめていた黒樹が、興味なさげにつぶやいた。
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