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最後の……
扉の鈴がリンと鳴った。
「いらっしゃい。搜しもの?」
黒樹がニコリと口元だけ微笑んで客に声をかける。
入ってきたのは、少年だった。
14才か15才といったところだろうか、テキストが入っているだろうカバンを一方の肩にかけている。
まだ午前中の時間だ。学生であれば、この時間にここにいるのはおかしいのだが、黒樹はそこにはまるで関心がなかった。
「あの、広場で楓さんという方が、ここに相談するといいと……」
入り口で立ち止まっている少年は、遠慮がちにそう言った。
黒樹はため息を付いた。
同居人である楓は、時々、こうやって店の宣伝をしてくれる。頼んでもいないし、望んでもいないのに。
ここは、魔術を使って捜し物の情報提供をしている。
形あるものから、形のないものまで、言い様によってなんでも情報を提供していた。
この世界にあると謂われている「闇」の在り処以外は。
闇――――それは、手に入れるとなんでも願いが叶うという不思議な力。誰も見たことも、触れたこともない。しかし、それは確かに存在をするのだ。
「悪いけど、ここはなんでも相談室ではないし、人生相談ならその楓って人にしてくれるかな?」
冷ややかに黒樹が言った直後、再び扉の鈴がリンと鳴った。
「あ、ちゃんとたどり着いたんだな。迷わなかった?」
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