短編集~プリズム 桜色へ会いに

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 のんびりと桜を眺めたり、水面を(のぞ)いたりしながら歩いていく。  どこまで歩いても桜の木が続いている。  こんなにたくさんの桜を見たことはないから圧倒されるけど、花の向こうに見えるのは雲一つない青い空で、ピンク色を引き立てている。  「綺麗だな……」  視界いっぱいに桜の花が咲いているのに、見飽きることがない。  気に入った桜の木の下で、少しの間、黙って見あげた。  花びらが、ひらりと風に乗って水面に落ちると、滑るように流れていく。  まだ、満開の桜はそれほど多くないから、水面を隠すほどではない。でも、その分、水に浮かんでいるという感じが綺麗だ。  木に咲いている時も、空を舞い飛んでいる時も、水に浮かんでいる時も、桜の花びらは()えて見える。  咲いている花はどれも可愛いと思うけど、やっぱり桜は特別だ。  一気に咲いて、あっという間に散ってしまうからかもしれない。もっと見たいという気持ちにさせる花だと思う。
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