短編集～プリズム 桜色へ会いに

　「そうだ、旅行しよう」

　会社帰り、私はいつものように書店へと入った。

　特に欲しい本がなくても、書店の空気が大好きだ。

　棚にはタイトルが書かれた背表紙が並んでいて、見るだけでわくわくする。

　そんな店内の、ガイドブックのコーナーで私は立ち止まった。

　表紙には、星の形の観光地。

　人気の観光地で、特に大型連休の頃は桜の開花と重なるから、普段以上に人混みがすごいらしい。

　あまり混雑が好きでないから、この街には数回行ったけど、その季節は避けていた。

　でも、表紙の写真は桜色に染まっていてとても綺麗だ。

　「今から予約は……」

　この街から行くなら、どの交通機関を利用するかは重要だ。