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さくらの存在
10日間の父と母を偲ぶ旅は終わった。
これまでもずっと一人だった、それでもやはりどこかで父と母は僕の中に存在していたのだと、亡くなって初めて分かった。
母のパソコンは僕の机の上に置いた!
またいつか気持ちが落ち着いたら、あの写真を見たい。
あのアンティークショップの人形が心の隅に残っていた。
きっと母もそう感じてあの人形を写真に収めたのだろう!
母と僕の感性は同じだったのかもしれない。
そう思うと何故かあの人形が愛おしかった。
これまでもずっと一人だったのに、両親が亡くなった途端不安になった。
僕はこの世界にたった一人・・・・・誰一人頼る人もなく、雨の中にずぶ濡れで立っているような心細さで何度も泣きそうになった。
そんな時さくらが僕に言った!
「理桜!俺がどうしてここに来たのか忘れたのか?」
「・・・・・」
「俺は理桜を守るために居るんだ、だからお前は一人じゃないだろ」
そうだった、僕にはさくらが居る!
僕を守るために此処へ来たさくら・・・・・僕の側にはさくらが居てくれる!
そう思っただけで、淋しさが消えた!
これまでもずっとさくらが居た、僕の側にはさくらが・・・・・
その時僕は母の写真にあった、アンティークショップの人形を思い出した!
パソコンを開いて、写真を見た!
「さくら・・・・・この人形見て」
「人形?」
「さくらに似てる」
「俺に?」
「これさくらじゃない?」
「俺は人形なんかじゃない」
「そうだね、でも顔とか雰囲気とか似てる」
「こいつの事かっこいいって思ってんだろ」
「うん、さくらと同じぐらいかっこいい」
「もしかしたら、さくらを僕のところによこしたのは母さんかもしれないね」
「俺は理桜のお母さんは知らない」
「そうだけど・・・・・一人ぼっちになる僕の事が心配だったんじゃないかな、だからさくらを僕のそばへ行かせたんだよ、絶対そうだと思う」
「理桜の事を守ってくれって言ったのが誰でも、俺はずっと理桜のそばから離れない。それがお母さんだったらいいな!」
僕には母も父も居なくなったけど、さくらが居る!
さくらはずっと一緒に居てくれる!
さくらを僕の側に送ってくれたのはきっと母さんだ!
母さんは僕の事を心配してたんだ!
ずっと逢っていなかったけど、僕のことは忘れていなかった!
そう思うと幸せだ気持ちになった!
僕のそばにはさくらが居た!
これからもずっと僕のそばにはさくらが居る!
それだけでいい!
完
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