0人が本棚に入れています
本棚に追加
筋腫分娩
ドクターがベッドの横に来た。
「筋腫分娩だな、これは…」
初めて聞く病名。
〈分娩???
血の塊だと思っていたのは、
ちぎれ落ちた筋腫だったわけ?〉
「はい、旭陽さん。
目を開けてください。」
ドクターがカルテに書かれた絵を見せながら説明してくれる。
「体が筋腫を異物と判断して、
押し流そうとして出血しているわけです。
貧血が改善したら、
紹介状を書きますから
別の病院で手術を受けてください。
起きられますか?」
〈え?このまま帰されるの?無理。
頭も上がらない…〉
「起きられません。無理です。」
「だめだな。点滴して。
それでは、
これからすぐ問い合わせますから、
いつもK病院を紹介するんですが、
いいですか。」
「結構です。お願いします。」
K病院なら旦那の会社からも近いし、
私の行動範囲内。よかった。
「こちらSクリニックです。
いつもお世話様です。
婦人科のS先生はおいでですか?
あ、先生ですか。
Sクリニックの○○です。
筋腫分娩の急患がおりまして、
緊急手術をお願いできますでしょうか?
そうですか。
それでは救急車でそちらに搬送いたしますのでよろしくお願いいたします。」
こうして、
私は結局救急車にお世話になることになった。
次男の出産で出血が止まらなかったとき以来、2度目。
なんだかいつも“血”がからんでいるな。
しかし、
相変わらず救急車というのは乗り心地が悪い。なぜなんだ?
気分が悪い人なんかはたまらんだろうな…、
などと余計なことを考えつつ運ばれていたのだが、
そのとき高山さんが心配して
同乗してくれていたことは気が付かなかった。
高山さんありがとう。
K病院に着くと、
搬送用のベットのまま婦人科の病棟へと運ばれる。
少し経つと看護師さんが来た。
「起きられますか?」
点滴の効果か、
ゆっくりと体を起こしてみると大丈夫だった。
「急がなくて構いませんから、
ショーツだけになって手術着に着替えてください。」
あとで旦那とも話したのだが、
K病院の婦人科の看護師さんはみんな優しくて綺麗でした。
これは余談。
「これから、
手術まで色々と準備がありますから、
ちょっと大変ですけれど、
休みながらやっていきますね。」
このころ、
やっと旦那と連絡が取れ、
病院にやって来た。
かなり慌ててきた様子。
青い顔をしている。
そりゃそうだよね。
まさか、急に手術になるとは思ってもいなかったものね。
「大丈夫だよ。治るから。」
青い顔をしながら、
必死で慰めてくれる。
そういう私も相当青い顔、
というより顔面蒼白だったそう。
なにしろ、
このときヘモグロビン値5.6だったそうです。
普通、外科などだったら、
即輸血の数値だとか。
我慢してくれたドクターに感謝。
このあと、
診察、尿検査、レントゲン、血液検査などをして午後2時半に手術となった。
この手術で、
医学の進歩を体験することになる。
最初のコメントを投稿しよう!