11. 隣にいて欲しい人はここには居ない

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 王宮の一角から、微かに楽器が奏でる音色と話し声が聞こえてくる。夜もすっかり更けてきた言うのに窓からは明々と照らされている光が漏れ出ているのが見えた。  今頃はフェル様もあそこで誰かと楽しげに踊っているんだろうなぁ。  …………まぁ、関係ないか。  毎年行われる春の舞踏会には、フェルディナンドも参加するのだと言っていた。  アリシアは視界から王宮を無理やり引き剥がすと、目的地へと足を速める。  身分を示す札を見張りをしている兵に見せると、中へ通してくれた。  アリシアがやって来たのは百合厩舎。  来客用の厩舎で、王宮で用事が済むまで馬たちはここの厩舎で休んで待機している。  アリシアは今日という日をずっと楽しみにしていた。と言うのも、王宮でこう言った催し物がある時には普段は見ない馬たちが各地から集まってくるから。  これまでは軍部の厩舎と薔薇厩舎にしか立ち入れられなかったが、先日のハンナの件で王から褒美に全ての厩舎への立ち入りを許可して貰えた。  全ての厩舎へ自由に立ち入れるのは総厩長と厩長だけなので、これはかなりの高待遇と言っていい。  ルンルン気分で足取りも軽く厩舎の中へと入って行くと、馬たちが誰か来たと顔を覗かせて見てくる。
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