11. 隣にいて欲しい人はここには居ない

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 御者達は王宮内にある待合室にいるので、厩舎の側にある小屋で厩番が数人、番をしているだけだ。  だれだれ〜? とでも言いたげな顔が馬房の柵から顔を出してくるのが可愛らしくてつい、クスクスと笑ってしまった。  馬たちに挨拶をしながら見て回っていると、アリシアの牧場から買われて行った馬に何頭か出会った。アリシアはこれまで自分の牧場で生まれて買われて行った馬たち全てを覚えている。家族を忘れるわけが無い。 「わぁー! アリシアだよ、覚えてる? 今はなんて名前なのかな? 相変わらず良い脚をしているねぇ」 「お前も母親似のツヤッツヤでいい毛並みだね。大切にされているみたいで良かったよー」  馬の鼻面に頬をウリウリと当ててイチャつき、久しぶりの再会を楽しませてもらうと、さらに他の馬も見て回る。 「あー、この子いいっ! いいわー。誰の馬かなぁ。お願いしたらちょっと種付けに貸してくれないかなぁ」 「おおー! この子なんてコンパクトな体してるけど体力ありそうねぇ。この子とあっちの芦毛の子で掛け合わせたらいいんじゃない? いやー、絶対いい子が生まれるわァー」  頭の中で妄想ブリーディングを楽しんでいると、カツカツと言う足音が聞こえてきた。  足音のする方へ目を向けると、正装をしてめかし込んだフェルディナンドが近付いてきた。 「やっぱりここに居たか。一人で何をブツブツ言ってるんだ?」
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