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「あれ? フェル様。こんな所へどうしたんですか。どなたかのお見送りですか?」
パーティー自体は明け方近くまで行われるが、途中で帰るという人もいる。先に帰るご令嬢でもエスコートしてきたのかと思ったのだけど……
「いや、違う」
との返答にハッと気が付いた。まさかコイツ……!!
「まさかとは思いますけど、空いている馬房を休憩室代わりに使おうって言うんじゃないですよね?! そういう事でしたら他所でやってくださいよ」
パーティーの席で用意される休憩室がどう言う目的で使用されるかくらい、参加したことの無いアリシアだって知っている。庭園にだってこう言う時にうかうかと入り込むと、男女でお楽しみの最中だったりするんだから。
連れてきたどこぞのご令嬢でも後ろから来るんじゃないかと、フェルディナンドの背後をキョロキョロと覗き見しようとすると肩を捕まれ振り向かされた。
「へぇ、お前にまさかそういう趣味があるとは」
かっ、顔が近い……!
後退りすると、狩りを楽しむかのようなフェルディナンドの顔がさらに近づいてくる。
「だ、誰が私の趣味だなんて言ったんですか?!」
「馬に見られながらって言うのも悪くないなんて思っていたりして?」
「もう怒りますよ!」
「自分はじっくり見ていたくせに?」
「それはそーゆー事じゃなくて……」
じりじりと距離を詰められて、とうとう空いている馬房の中の壁に背中がぶつかった。
ひいぃぃ……! 誰が助けてー!!
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